海 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2009年3月2日発売)
3.65
  • (143)
  • (305)
  • (283)
  • (56)
  • (8)
本棚登録 : 2947
感想 : 300
4

小川洋子さんの短編集。
短編とは思えぬ小川洋子ワールドに浸った。

多くのお話は、主人公が、少し不思議な人たちと交流する。
その交流を通して、主人公の心が少し豊かになる。読んでいる私の心も、あたたかくなるような、少し広がったような、そんな感じがした。

ラフスケッチみたいな3ページ程度の短編も2つ入ってる。
幼稚園バス運転手のドロップのはなしは、ちょっと泣きそうになった。
「ひよこバス」もそうだったけど、大人の男性が子供に向ける優しい眼差しって、心に沁みる。
中年以降の男性が子どもに優しい場面って、多くは父と子、祖父と孫くらいのもので、他人が幼い子を尊重して、こっそり優しくすることって、実は貴重な場面なのではないだろうか。

「ガイド」の少年の頼もしさにも、母の気持ちになって涙腺が熱くなった。
息子を心配して家に一人では置いとけない!と思う母が、息子に助けられている。
親って、そうなんだよ。この話では、息子はまさに大活躍したわけだけど、別に活躍しなくても、子どもがいるだけで親は救われて励まされて支えられているんだよなぁ…なんて思いながら読んだ。

私の中にたしかに存在するのに、気付いてない、もしくは忘れそうだった気持ち、思い出させてもらいました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: こども
感想投稿日 : 2022年7月15日
読了日 : 2022年7月15日
本棚登録日 : 2022年7月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする