盛り上がりに欠けたまま読み終わってしまったな。
ピアニストになれなかった佐和子は、ラストで、りょうとの数日間の恋や自分の学生時代の孤独などを曲にすること(作曲)を決意している。
中学生の男の子の青春や恋心を踏み台にして作曲という芸術の足がかりにしようとする佐和子の強かさは、女郎蜘蛛が共食いや他の虫を捕食して肥えていく様を想像させた。
私が中学生のときを思い起こせば、友達の親、まして結婚してる大人を恋愛対象に見て惹かれることは全くなかった。
佐和子もそういう子どもだっただろう。
だから、「誰々のおんちゃん」「誰々のおばちゃん」としか、地域の年長者を捉えていない。
それと比べると、母の同級生である佐和子を好きになるりょう(中学生)の気持ちがよくわからなかった。
佐和子は、りょうはお腹の中にいた時からわたしのことを…みたいに妄想してたけど、うーん、それはないかな。
私のなかの結論は、りょうはとても魔性な存在であるということ。それは悪い意味ではなくて、理性や理屈を超えて抗えない魅力を備えた少年…。
ちょうど、萩尾望都のポーの一族を同時進行で読んでたので、そんなふうに思ったのかもしれないけど(笑)。
盛り上がりに欠けたまま終わってしまったお話でしたが、佐和子がピアノの先生に会いに行くところは良かった。
ピアノの先生が佐和子に謝るところ。
私も、大人になってから再会した先生に謝られたことがあります。あなたの受験が失敗したことに責任を感じてるって…。
当の私(生徒)は、そんなこと考えてもいないのに。先生っていうのはそんなことまで考えるのか…とびっくりして、人生の中の印象深い出来事のひとつ。
私は、今となっては受験失敗して良かったと思ってる、あの時失敗してなければ、私はその後努力することはきっとなかったと思うから。と、本心で思っていて、そう先生に伝えたけど…。
ピアニストになれなかった心の傷を引きずり続ける佐和子の心に、先生の言葉はどう聞こえたのだろう?
- 感想投稿日 : 2021年1月16日
- 読了日 : 2021年1月16日
- 本棚登録日 : 2020年12月27日
みんなの感想をみる