母親からの小包はなぜこんなにダサいのか (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社 (2021年9月17日発売)
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本棚登録 : 2243
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タイトルから、ずっと気になってた本。
エッセイっぽいタイトルだけど、短編集です。

離れて暮らす母からの小包み、我が家でも定期的に受け取っています。
地元のお菓子、地元の産直で買った野菜、漬物(地元でしか見たことないやつ)。食べ物だけじゃなくて、靴下とか子どもへの本とか、しかも本はブックオフで買ったやつ。
なぜこんなにダサいのか?と言われれば、きっと離れて暮らす我が子に、地元の味を食べてほしいとか、これがあったら便利だなとか生活を心配してのことなんでしょうね。脈絡なくあれもこれも!少しでも喜んでほしい!って気持ちなんだろうな。
地元が一番アンチ東京の母も、キャリアウーマンで娘に厳しめの母も、50代で再婚して田舎に移り住んでしまった母も、皆娘に対する気持ちは同じ…。
だからこそ、子から搾取するだけの虐待親の元で育った女性が、農家から買った小包を「お母さんから」と言ってしまう気持ち、こんなお母さんがいてくれたら良いなぁという憧れ、胸が苦しくなった。

この本のタイトルと表紙に、小1息子がすごくくいついて、表紙を見て「でもシャインマスカット入ってるのにダサいのかなぁ?」てのこと。
残念ながら、このお話の中では小包にシャインマスカットは入ってませんでした!シャインマスカットが届いたら「ダサい」なんて言わないよねぇ。

私の地元山形では、秋になると「芋煮会」という文化があります。山形の芋煮は、里芋、舞茸、ささがき牛蒡、白こんにゃく、長ネギ、牛肉薄切りが入るんだけど、ある時山形のスーパーマーケットが「芋煮便」という、芋煮に必要な材料一切合切が入った小包(調味料も含む)を販売した。これがかなり好評だったとか。
山形ではあっさりと手に入る材料も、他の地ではそうもいかない。特に皮剥き里芋(冷凍のちっちゃいやつじゃないよ)や美味しい牛肉がお手頃価格で手に入ることはなくて、だからすべてセットにして送るから作ってね!食べてね!という気持ち、これはこの本の母の思いに通じると思う。
この企画を考えた人は誰かのお母さんなのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 家族
感想投稿日 : 2024年1月24日
読了日 : 2024年1月27日
本棚登録日 : 2024年1月13日

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