希望が死んだ夜に (文春文庫 あ 78-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2019年10月9日発売)
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同じ中学に通うネガとのぞみ。
のぞみを殺害したと自供して逮捕されたネガ。
同級生という以外に接点のなさそうな2人の本当の関係がわかっていき、そして本当のことが明らかになる。

なんてつらい、かなしい話だ。
私はもう40のおばさんだけど、中学高校時代の友達と一緒に過ごしたわくわく感を、ふたりの関係性が明らかになる中で感じていた。
本を読みながら、私もネガと同様に希望を感じでいたんだ。
そして、そこからの落差を私も味わった。
どん底にいつづけることより、希望を知ったあとに、その希望が失われたときのほうがつらい。
誰かに希望を味わわせてしまったことは、罪なのだろうか。

貧困と、行き渡らない社会保障。不都合なことはなかったことにしようとする大人達。
希望が失われたこの世界で、わずかな希望をたぐりよせようとしていた少女たち。
のぞみの死は、避けられないものだったんだろうか。私はそうは思わない。
のぞみがネガとお菓子食べながらおしゃべりできていたら、ネガの顔を見ることができていたら、思いとどまれた可能性が高いと、私は思う。
死ぬのが怖いから仕方なく惰性で生きている感覚、私も分からなくはない。惰性の生の中で、ちょっと笑えることとか、少し元気が出ることがあって、そんな些細なことに多くの人は生かされている。
そういう1日1日が積み重なるなかで、楽しいと思えるものや、大切だと思えるものに出会え、生きる目的がみつけられる。私の人生はそうだった。
だから、私はのぞみを殺した犯人を許せない。どうせ死ぬつもりだったなら…なんて動機にならない。憎い。
もしのぞみの計画通りに運んでいて、ネガとお菓子食べながらおしゃべりしていたら、のぞみは生きていたと私は思う。私はそう思いたいのだ。

このシリーズ、本当に好きなんだけど、つらいなぁ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2024年4月16日
読了日 : 2024年4月16日
本棚登録日 : 2024年3月29日

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