五賢帝時代のローマをあますところなく使って、密偵のファルコが謎解きをするミステリー……と思わせて、実は大都市ローマの雰囲気や空気感、どんどん増えていくファルコの周辺人物の成長や変化を楽しむお話。事件の解明は本の骨子の半分で、残りの半分はファルコ自身の身辺の変化を見守る話と思われます。ファルコの義理の兄弟達が健やかに育っていく様子とかw
密偵というと、国家や軍事組織に所属するスパイのような印象がある言葉なんだけれど、ファルコの場合は国家から依頼を受けることがある私立(半公立?)探偵といった趣がある。第1巻を読んでいないので、基本的な設定がわからないのです。図書館で本を借りることのデメリットは、続きものが必ずしも順番通りに読めないことがあるんじゃないかと思う。
このファルコのシリーズは、『錆色の女神』以来2冊目という。事件がそれぞれ独立しているようだから、順不同で読んでも大丈夫だと思ったんですが、色々甘かったです。ファルコの周りの友人親戚連中、名前が乱舞してて覚えきれないよー(^_^;) 続けて読んでいないから、ファルコ親戚に思い入れがなくって、その辺を読むのにちょいとダレました。
事件そのものは興味深く、けれど推理する余地はなくサクサクと進む感じ。前半はほとんど進まなくってやきもきしました。ローマの水道事情がはしからはじまでストーリーに盛り込まれていて、そういう点はすごく興味深かった。事件への興味より、ローマの水道システムやお祭りの雰囲気の描写がこの本の魅力といえるのかな。
そして、今回の実在人物フロンティヌスは終始かっこよくて、単発キャラなのがとっても惜しいです。美味しいところをさらっていっただけでなく、人となりがよい感じで、ファルコシリーズではまれな“かっこよさが魅力”なキャラでした。彼の著作に興味が出てしまうほど。
- 感想投稿日 : 2008年5月31日
- 読了日 : 2008年5月31日
- 本棚登録日 : 2008年5月31日
みんなの感想をみる