こちら『ランドリー新聞』編集部 (世界の子どもライブラリー)

  • 講談社 (2002年2月20日発売)
4.15
  • (19)
  • (11)
  • (6)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 182
感想 : 17
5

カーラ・ランドリーは転校前の学校で、ランドリー新聞なるものを発行してきた。事実を伝えているものの、その内容は、誰かを攻撃・批判するものも多く、大人たちの批判を買っていた。
そして、転校先の小学校でもランドリー新聞なるものを発行するのだ。

カーラのクラス担任は、授業を放棄するようは先生で、宿題も出さないし、勝手にクラスで勉強させ、本人は新聞をゆったり読んでいるような、周囲の保護者や校長達から煙たがられる存在。校長は、ラーソン先生をどうにかして辞めさせる材料はないかと狙っている。

そんな中でカーラはラーソン先生のやり方を問う記事を書いた新聞を発行。ラーソン先生を読んでショックを受け、一度は怒るものの、家で今までの自分の行動を振り返り、これではいけないと、考えを改める。

これをきっかけにラーソン先生は教室で新聞を通して、報道と表現の自由についての授業を行っていく。
一方、カーラは、母親からたとえ事実ではあっても人を傷つけ悲しませるような記事を書くことはあってはならない、と言われ、ラーソン先生の授業も相まって、自分の書いてきた新聞内容を振り返り、どのような新聞が『良心』のある新聞なのか、を考える。
ランドリー新聞は、学級新聞であったが、反響は大きく、目立たない存在だったカーラは一気に注目を集める。
そして、新聞発行にクラスから協力者も現れ、新聞のファン(大人も子どもも)も増え、カーラは編集長に、ラーソン先生が新聞における責任者となり、発行部数も増やしていく。

ところが、ある日発行された新聞を校長が読み、それを材料に、ラーソン先生を退職に追い込もうとするが、先生は、自らの退職の危機をも客観的にとらえ、授業として、アメリカの憲法でも保障されている、報道と表現の自由、についての授業を進めていくのだ。


報道と表現の自由。

事実は事実として、それを好意的にとらえるか、批判的にとらえるか、それとも中立的にとらえるのか、多方向からのアプローチがあります。
同じ事実でも、そこに新聞の『良心』が現れるのです。
ランドリー新聞のモットーは『真実と思いやり』
授業を通して新聞を作っていく子どもたちに色々な気づきが出てきてきます。


私が素晴らしいと思ったのは、この授業風景。
日本とは違って、教科書にだけ沿って授業を行うのではなく、あるテーマを先生が投げかけ、生徒同士で自由に意見を交わし、それを最後に先生がまとめていく、というスタイル。

今、日本が学校に取り入れていこうとしている『アクティブ・ラーニング』の世界がここにあります。
こういった授業を進めることにより、子どもたちは、疑問に思ったこと、意見を交わす力を自然と身につけていくことができるのだな、と感じました。

難しいテーマでも、疑問の投げかたを優しくすれば、子どもたちもそれを考えて、理解していくことができるのだ、教えてくれました。

ラーソン先生も子どもたちにとっても楽しい授業をすることで、子どもたち、そして大人たちから再び信頼を得ていくのです。

児童書ではあるけれど、読みごたえがたっぷりの面白みのある本でした。大人にもお薦めです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2022年5月29日
読了日 : 2019年5月17日
本棚登録日 : 2022年5月29日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする