えどさがし しゃばけシリーズ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2014年11月28日発売)
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畠中恵「しゃばけシリーズ」初めての外伝(2014年12月文庫本)。文庫本オリジナルの短編5話からなる短編集。
外伝なので主人公は5話とも一太郎ではない。主人公は第1話は佐助、第2話は河童の禰々子、第3話は広徳寺の寛朝、第4話は日限の親分のおかみさんのおさき、第5話は仁吉だ。
一太郎を取り巻く妖達の時代が過去から未来へと綴られていく。

第5話の<えどさがし>はこの本のタイトルになっているのだから、やはりこの外伝のメインテーマだろう。時代は明治になって20年以上経ち、妖達は同じメンバーが揃っているが、当然一太郎はもうこの世にはいない。シリーズ14作目「なりたい」で一太郎は神々に“生まれ変わっても妖達に巡り会いたい”と言った。シリーズ17作目「むすびつき」では貧乏神の金次が200年以上前、戦国時代に一太郎の前世に会ったかも知れないと言った。そして一太郎自身も振り売りの若者が輪廻転生した現実を見ている。必ずしも人に生まれ変わるとは限らないという現実を。
しかし<えどさがし>では、きっと一太郎の生まれ変わりの若だんなと必ず出会い、妖達との生活が繰り返し続いていくという未来を予見させるのである。現実の世界でも輪廻転生というのが現実に起きればいいなあと本気で思ってしまう。
 
第1話<五百年の封じ絵>
佐助がまだ戦国時代のおぎんと仁吉との出会いの記憶を甦らせる封じ絵。500年後おぎんに再会、身籠ったおたえの子、おぎんの孫になる一太郎の兄やになる背景の物語。「長崎屋」の主人がまだ伊三郎の頃の話。

第2話<太郎君、東へ>
徳川家の利根川普請に河童の禰々子と利根川の化身たる坂東太郎が関わっていたと言う物語。徳川家康の業績が………と考えてしまう。まだ「長崎屋」は登場していない頃の話。

第3話<たちまちづき>
広徳寺の寛朝が秋英、延真と共に口入屋「大滝屋」夫婦と手代の相談事を解決する物語。終盤佐助も登場する。現在の「長崎屋」の頃の話。

第4話<親分のおかみさん>
日限の親分(清七)と病弱なおかみさん(おさき)の長屋の土間に赤子の男の子が捨てられたことから始まる押し込み強盗捕物帳の物語。子が無かった二人の子育て生活が始まる話でもある。しゃばけシリーズにたびたび登場する日限の親分にシリーズ途中から子が出来たことになった訳を今回初めて知ることになる。現在の「長崎屋」のちょっと前の頃の話。

第5話<えどさがし>
江戸が東京になって20年以上経った頃の話。一太郎と妖達が暮らしていた頃からもう100年ほど経っていた。「長崎屋」は「長崎商会」と名を変え、銀座の近代的な建物に様相を変えていた。
一太郎が転生して戻って来ることを信じ、仁吉が佐助と共に店を守って来た。金次や鈴彦姫、獺も一緒だ。佐助は一太郎の情報を求めて店を出ていたが、屏風のぞきは居なかった。
そういう状況の中で仁吉は、出向いた新聞社である殺人事件に遭遇する。そこで出会った交番勤務の巡査が妖で仁吉は捜査に協力する。事件は過去の強盗事件の盗品の隠し場所を知った新聞社の定年間近の社員の盗品を巡る内輪揉めによる犯行だった。
盗品の中に屏風のぞきの屏風もあり、これは仁吉がこっそり持ち帰り、屏風のぞきも「長崎商会」の仲間の所へ無事帰れたのだ。そして出掛け放しだった佐助から「若だんなが見つかった」という手紙が届く。これからまた以前と同じような若だんなと妖達との生活が始まることへの期待が膨らんで物語は終わる。


読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年5月5日
読了日 : 2022年5月2日
本棚登録日 : 2022年4月29日

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