主人公・代助が友人の妻を奪う話です。
これだけを書くと社会的な側面だけに着目してしまい、不実な奴で終わってしまいますが、実は様々な側面があり、奥行きが深く清々しい作品だったりします。代助の心の変化が絶妙に描かれていて、読み手まで心臓がバクバクします。退屈な『吾輩は猫である』とは違い、本作は非日常で地に足が着かない心持ちへ誘(いざな)ってくれます。
そして日露戦争が終わってしばらく経った明治末の東京、その雰囲気が良く伝わって来ます。『坂の上の雲』では、明治を「高揚感」と表していますが、本作はあまり明るく描いてません。それにしても、このような現代でも通用するストーリーを目の当たりにすると、やはり人間の本質はそうそう変わらないものだと実感してしまいます。
最後に主人公・長井代助、どこか他人とは思えない程、自分にも共通する部分があります。それとも誰もが少なからず持っている資質なのでしょうか?ともあれ代助に好感を持ってしまったのは確かで、それを非難されても構いません。明治末、彼らはどんな気持ちで大正を迎え、昭和へ進んで行くのでしょうか?昭和に入る頃、代助は今の私と同じくらいの歳になります。同じように新年号を迎える平成末、代助と自分を無理くりダブらせながら楽しみ尽くした一冊でした!
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
青空文庫
- 感想投稿日 : 2018年11月13日
- 読了日 : 2018年11月12日
- 本棚登録日 : 2018年11月13日
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