新撰組局長首座 芹沢 鴨 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (1998年8月20日発売)
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新撰組局長首座の地位にありながら、近藤勇ら試衛館派に粛清された芹沢鴨。新撰組を描いたドラマなどではもっぱら乱暴者の悪役として扱われる。だが本書における鴨は放蕩無頼ではあるが、学識があり、自己の信念に忠実かつ純粋な人間に描写されている。神道無念流の免許皆伝の腕前で、竹刀剣術に飽きたらず人斬りに熟達、多数との斬り合いにも臆するところがない。彼の剣術のこだわりは随所でうかがえる。

物語は桜田門外の変の翌年、1861年からはじまる。鴨三十半ばにして、攘夷志士の集団・水戸誠心方三百人の頭であった。本書前半は通説に基づいた水戸時代のさまざまなエピソードを織り込む。その後、浪士組に加入して京に向かい、新撰組結成にいたる仕儀となる。本作で際立っているのが官能小説と見紛うばかりの濡れ場の多さである。本書の鴨はいい女をみれば抱きたくなる好色家で、その対象は通りすがりの女にも及ぶ。まっすぐに「やらせてくれ」といった調子で奔放不羈そのもの。だがコトが終わると女はもうメロメロ。まさに快男児。最期は大胆不敵なふるまいと、数々の乱暴狼藉が会津の逆鱗に触れて粛清されるが、近藤も土方も最後まで彼の死を惜しんだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史/時代小説
感想投稿日 : 2023年8月30日
読了日 : 2014年8月18日
本棚登録日 : 2014年8月18日

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