上級国民/下級国民(小学館新書)

著者 :
  • 小学館 (2019年8月6日発売)
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感想 : 51
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表題が「上級国民/下級国民」と池袋で母親と3歳の娘がはねられて死亡した乗用車の暴走事故を機にネットで飛び交った「上級国民」を使っているのでもう少し「上級国民」たる日本の支配階級を弾劾するような内容かと思ってましたが、各種データや多様な文献の引用を用いて、日本の格差問題を論理的に分析しています。
リベラルは自由であることを選択する。そして、人種、性別、性的思考などでは差別することなく、自身の努力で大切であると主張する。その結果として、数億人が貧困から脱出したことで世界全体の不平等は縮小しているのだ。
だがしかし、日本や米国そして旧西ヨーロッパなどの先進国では一様に中間層が没落している。没落した中間層は努力が足りなかったというのがリベラルの見立てである。その没落した中間層がトランプ大統領を誕生させ、ブリグジットを引き起こし、黄色いベスト運動を展開したのである。
一部からこのような人を救うのはベーシックインカムであるとの声も上がっているが、著者は完膚なきまでにこれを否定して見せる。現在はテクノロジーが平均的な人類の適応力を越えているから適応できる人とできない人で格差が広がるが、すべての人類を越えてしまうと格差は無くなるのかもしれないと結んでいる。
あと少し驚いたのは日本は学歴格差が格差社会の源としている点です。たしかに有名大学を出て一流企業に入る人は上級国民のパスポートを貰ったようなものだし、優秀な人は多い。中小企業などでも学歴(大卒と高卒)で差別されること多いのだろうか。少なくともIT業界では学歴は関係なく実力でのみ評価されるのだが。。。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年9月15日
読了日 : 2022年8月15日
本棚登録日 : 2022年8月15日

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