珈琲屋の人々 宝物を探しに (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社 (2018年6月13日発売)
3.44
  • (8)
  • (26)
  • (36)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 264
感想 : 28
4

珈琲屋の人々第三弾。
以前の第二弾を読んだのが3年前だったので内容をよく覚えていないが、“昭和の夜のドラマ”という雰囲気は、やはり色濃く感じる。

前科のある珈琲屋のマスター、宗田行介(そうだこうすけ)、幼馴染で想いあう関係の辻井冬子(つじいふゆこ)、同じく幼馴染の島木。
悩める人々は迷える子羊のように珈琲店へと足を運ぶ。
口の重い行介にかわって、商店街一のプレイボーイで話術の巧みな島木が話を聞き出し、冬子が思い切ったアドバイスや審判(!?)を下すこともある。
良いトリオかもしれない。

結果として行介の人殺しは商店街を救ったため、英雄視される一面もあり、子供の頃から住み続けた町でもあるので、石もて追われることはない。
しかし、“前科者を見る堅気の人々の目”というものが常に存在する。
行介を“人殺し”と好奇の目で見ながらも、救いを求める人々が珈琲屋を訪れてやまない、それはどういう心理なのだろうか。
共通するのは、悩みの他にある“罪の意識”というものだ。
皆、罪深い。
そして、非常に自分勝手だ。
それが人間というものなのだろう。
訪れる女性たちが口にする「男はずるい」という言葉、「人間は弱いから、自分では半分しか決められない。あとの半分は他人任せ」というセリフが鋭い。

行介は、責任を半分逃れた人の罪を代わりに背負い、悲しみ、欲を持たず、癒しの珈琲を出し続ける…まるでメシアのようではないか。

1巻目では秘めていた冬子の想いも、巻を追うごとにあらわになり、行介との関係は、この巻では各短編をつなげる一本の大きな流れになっている。

『恋敵』『ヒーロー行進曲』『ホームレスの顔』『蕎麦の味』『宝物を探しに』『ひとつの結末』『恋敵』

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年8月24日
読了日 : 2018年8月24日
本棚登録日 : 2018年8月24日

みんなの感想をみる

ツイートする