タテ社会と現代日本 (講談社現代新書)

  • 講談社 (2019年11月13日発売)
3.69
  • (9)
  • (19)
  • (18)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 313
感想 : 21
4

冒頭「二〇一七年に、今年は拙著『タテ社会の人間関係』が出版されてちょうど五〇年になります、と出版社から知らされて(私自身気がつかなかったことであったが)、それを記念して小冊でもよいから一冊出してほしいと依頼を受けた。」
末尾「日本人一般が坊主と袈裟をはっきり分離して考えられるようになり、職種別組合というものが本当に成立するようになったら、そのときこそ、ソーシャル・ストラクチュアも変るのであろうと思う。それほど、体質改善がなされなくても、少しでもそうした部分がふえていくことが可能であるならば、それにこしたことはないと思うのである。」

雑誌「クロワッサン」で紹介されていて購入。
日本社会の構造を「タテとヨコ」、「場と資格」などのキーワードを用いて分析。前著の『タテ社会の人間関係』(1967年刊)での主張を現代の現象に当てはめ直してある。巻末(というには長い)には附録として大元となった「日本的社会構造の発見」(『中央公論』1964年)も掲載されている。

日本ではその「場」に着いた順番が重視され、タテの関係が形成される。資格(属性)は重視されない。長幼の序(中国や韓国)ともまた違い、親分と子分、先輩と後輩の人間関係。
対して、イギリスやインドでは、階級やカーストが重要な役割を果たす。

最近、成果主義を導入したり、終身雇用が崩壊して雇用の流動性が増している職場が増えているのだろうけど、どこかでタテ社会が残り続ける。単純に外国の仕組みを取り入れてもうまく機能しない場合もある。そうしたことを考えるためには、本書の言うところが参考になる。

エピローグで「一つだけの「場」からの転換」として、「日本のタテ社会は、どうしてもネットワークの弱さを抱えています。その弱さをいかに補間していくか、複数の居場所をいかに見つけていくか、高齢化が進む現在、そうしたことを考える時期にきていると思います。」と述べている。家庭や職場以外の人間関係を築くためには自分で努力をする必要がある。ボランティア的にやっていることとか習い事とか、面倒だったり自分で自分を追い込んでるような気がしてしまう時もあるけど、無駄ではないと思える。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年
感想投稿日 : 2020年8月25日
読了日 : 2020年8月25日
本棚登録日 : 2020年8月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする