イッパイアッテナの斉藤洋によるギリシャ神話です。斉藤洋のファンなので選びました。
全編がアテナの一人称での語りになっているのが特徴で、アテナが出てこないエピソードも他のオリュンポス十二神の紹介もすべてアテナの観点から語られています。他の神の所業を嘆かわしいと言ってみたり、人間を神に比べて見下してみたり、その視点が面白いと言えば面白いのですがちょっとわずらわしく思ってしまうこともありました。どうしてこのような構成にしたのかと考えてみるに、十二神の入り組んだ親族関係を生々しく感じさせるためとか、ギリシャの神の人間らしさを感じさせるためとか、はたまた稀にあるエピソードの矛盾を吸収するためかと思ったりしましたが、これらの点では確かに有効でした。ギリシャ神話はゼウスを中心として、相手が自分の姉妹でも人妻でも人間でも男性でも節操なく「恋」に落ちて子作りしてしまうエピソードが満載なわけですが、このギリシャ神話にはそのようなエピソードもふんだんに含まれています。どぎつい表現などは決してないとはいえ、小学校低学年の子供に読み聞かせるのにはちと困りました。読み聞かせに使うべきではなかったかもしれません。他のもっと子ども向けに編集されて当たり障りないエピソードに限定されている児童書に比べると、本書は踏み込んでおり扱っているエピソードの幅が広いと言えます。アテナはさばさばした性格で、同じ著者の西遊記の孫悟空を思い出させるところがあり、ちょっと面白かったです。
子供たちのお気に入りは商い・泥棒・賭け事の神のヘルメスということになりました。ヘルメスは赤ん坊なのにベビーベッドを抜け出して牛を五十頭も盗んで、二頭を焼いて食い、さらには探しにきたアポロンに対してしらを切り、最後はうまく取り引きをして金の杖までせしめてしまうという、このエピソードが子供たちの心を射止めました。
- 感想投稿日 : 2013年9月16日
- 読了日 : 2013年9月16日
- 本棚登録日 : 2013年9月16日
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