ほんまにオレはアホやろか (新潮文庫 み 31-1)

著者 :
  • 新潮社 (2002年7月1日発売)
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R2.12.5 読了。

 小さい頃からテレビや漫画などでみてきた「ゲゲゲの鬼太郎」の作者である水木しげるさんの自伝。
 小さい頃はガキ大将で、昆虫や貝殻や海藻を収集したり、のんのんばあという妖怪や自然の精霊について話してくれるばあさんから話を聞いたりして過ごしていたという。
 本人曰く、学校の勉強はあまりしなかったとのこと。その後、時代は第2次世界大戦へ。水木さんも激戦地のひとつであるラバウルに出兵し、左腕を失う。また、終戦後出兵先の原住民との交流を通してその自然と共存して、ゆったりと仲間と共に生きている姿に感銘を受けられる。
 日本に帰ってきてからは、紙芝居の画家から徐々に漫画家へと転身していく。
 若い頃は食うや食わずの生活も悲壮感は感じさせず、本人曰く必死に生きてきた。その生き様が本書に描かれている。この本は読むほどに水木しげるさんの魅力に引き込まれて、読み終わる頃には人間・水木しげるさんのファンになってしまった。
 もちろん本書は、とても面白かった。

・「僕は幼いころから虫に興味を感じていたが、それは、虫そのものをおもしろいと思うとともに、その生き方に共感するような面もあったからだ。
 大地の神々によって生かされているという、僕の漠然とした人生観は、すでに虫によって実践されていると思われたからである。それに虫には自分の生き方がある。蝶の生き方もあれば、蟻の生き方もあれば、オケラの世界もあれば、ミミズの世界もある。いろんな生き方や世界があるのだ。いま、自分が生きている世界だけでなく、別の、もう一つの世界があるというところが面白い。」
・「アフリカのピグミーたちは、『急ぐことは、死につながり、ゆるやかに進むことは、生を豊かにする。』と、信じているらしいが、全くその通りだ。自然は人間を、せきたてるようにはつくってはいない。土人たちは、自然のリズムに従って、生活しているから、こんなに楽しいのだ。」
・「『わが道をゆく』という言葉があるが、考えてみりゃあ、落第したってくよくよすることはない。わが道を熱心に進めばいつかは、神様が花をもたせてくれる。神様が花をもたせてくれなくても、それはそれなり、また救いがあるものだ。人がどうこうしたからとか、スタートにおくれたからといって、クヨクヨする必要はない。虫の中にいろいろな種類があるように、われわれ人間にも、いろいろな種類があるのだ。トンボにカマキリになれとか、南京虫にみみずになれと、いわれても困る。
人間はそれぞれ違うのだから、それぞれ変った生き方をしたっていい。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 作家名
感想投稿日 : 2020年12月6日
読了日 : 2020年12月5日
本棚登録日 : 2020年9月25日

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