『生きて死ぬ智慧』がベストセラーになっていたころ、著者のポートレートが嫌いだった。神経質で自虐趣味な人物に見えたのだ。誤解であった。著者の顔は、長く苦しい闘病生活の勲章のような、美しい顔なのであった。多田富雄さんと同じく、著者の戦いは病院と医者との戦いでもあったことは覚えておかなければならない。生命科学の専門家である著者の宗教観に、今まで考えてきたことが似ていることに力づけられる。ボンヘッファーに言及されていることもうれしい。二十世紀において飛躍的に科学認識が進歩したにもかかわらず、その応用や利用ばかりに向いて、いっこうに人間存在の新たな展開に向かわないことが悲しい。著者の紹介する「三次過程」の認識に進化するような、大きな流れは訪れないのだろうか。
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- 感想投稿日 : 2011年5月15日
- 読了日 : 2011年5月15日
- 本棚登録日 : 2011年5月15日
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