ニューヨーク大聖堂(下) (講談社文庫)

  • 講談社 (2005年5月10日発売)
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本棚登録 : 71
感想 : 8
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(上巻の感想からの続き)

実際、ニューヨーク大聖堂籠城事件をテーマとして扱った本書は上下巻合わせて約1,070ページもあり、下巻の350ページ目でようやく銃撃戦の幕が開く。それまでは発端と犯人とネゴシエイター及びバークとの頭脳線を中心として物語が流れる。
これはアクション巨編としては読者にストイックさを要求する構成で、確かに途中、人質となったモーリーンとバクスターの数度の脱出劇が挟まれるものの、物語の持続性を保つのにはいささかエネルギーが欠けている。そういった意味でもエンターテインメント作家デミルとしての青さが目立つ。

そして最後のハッピーエンド。
いや、ハッピーエンド自体は嫌いではない。ただ、何となく色々なことがうやむやにされた終わり方が非常に座り心地が悪い気持ちにさせられるのだ。
マーティンの結末の呆気なさ、6時3分で爆弾が爆発しなかったことに対する言及(爆弾処理の手に天使が舞い降りたで済まされても困るのだが)、そして冒頭で囚われの身となったシーラの行く末。
これらが実に消化不良で幕を閉じる。これは最近の『王者のゲーム』でも見られた喉越しの悪さと全く一緒である。

確かに過程は読ませる。
しかし小説とは結末よければ全て良し、つまり裏返せば結末が脆弱ならば過程が良くても全てが台無しになる、面白さは半減するのだ。デミルだからこそ、期待値も高くなるわけで、最終的にはやはりデミルの若さ故の荒削りさが目立ったというのが正直な感想である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ&エンタテインメント(海外)
感想投稿日 : 2021年6月24日
読了日 : 2021年6月24日
本棚登録日 : 2021年6月24日

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