ハリー・ポッターと秘密の部屋

  • 静山社 (2000年9月1日発売)
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感想 : 921
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映画を先に観ていることもあって、文章がするするとイメージを伴って頭に入っていく。前作はそのためにストーリーの先が読めて楽しみが半減したという感想を抱いたが、今回は逆。意外にも今回のストーリーは諸々のエピソードや設定を断片的にしか覚えていなく、それら記憶の断片が今回でストーリーになったと云うのが正直な話だ。だから今回は以前よりも純粋に小説として愉しんだ。

そのストーリーというのは、以下のような感じ。

魔法学校生2年生を迎えるハリーはドビーという妖精からホグワーツへの登校の妨害を受けたが、ロンの父親の空飛ぶ車でホグワーツへの登校に成功する。しかし、ハリーの学校生活は何か得体の知れない何かに妨害を受けているかの様相を呈し、はたまた見栄張り教師ロックハートの嫉妬も加わってペースを乱され、受難を大いに受ける。そんな中、ホグワーツに纏わる秘密の部屋の噂が勃発し、マグル出身の学校生が石のように膠着した姿で発見されるのだった。

ストーリーの詳細を忘れたのもさもあらんとも云うべき、今回は多重構造のプロットであり、少年少女の読み物としては高度な内容だと思った。

秘密の部屋を中心にして起こる怪事件の犯人及び共犯者(正しくは共犯を自分の意志に関係なく強要された者)、秘密の部屋を探し当てるまでの経緯に仕掛けられた構造はかなりの紆余曲折を経ており、物語作家としてのローリングの才気溢れるといった感じだ。

犯人のアナグラム、共犯者がなぜ共犯せざるを得なかったのか、そして共犯者にジニー・ウィーズリーが選ばれた政治的陰謀、これら全てがものすごく練られていた。
秘密の部屋を核にしてマトリョーシカのように入れ子構造で数々の登場人物の思惑が交錯する。
このプロットを十全に理解した少年少女は果たしてどれだけ存在するのだろうか?

前作も感じたことだが、単なる少年少女向けファンタジーに終始していなく前述のような特徴からも判るようにミステリの要素が色濃くあり、これはやはりイギリスの作家であることも起因しているのだと思う。
ミステリ発祥の地イギリス。やはりミステリの血は濃いということか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2021年9月5日
読了日 : 2021年9月5日
本棚登録日 : 2021年9月5日

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