やりたいことは二度寝だけ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062937184

作品紹介・あらすじ

地味でもアホでも生きていけます。文房具集めに熱中し、からあげ王子に思いを馳せ、ドラクエに深い愛情を注ぐ。日常の些細でおマヌケな出来事を、淡々とした筆致で描く。「本書のどうでもよさについて、自虐も言い訳もしない。何も残らないし、ひたすら地味で意味もないけど、読んでる間少しらくになった、と感じて頂ければ幸いである。」昼は会社員、夜は小説家の超・庶民派芥川賞作家による“地味おもしろい”初エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • エッセイは、合う合わないが全てだと思う。
    そしてさらに言えば、好きな作家さんのエッセイがそのまますごく好きか、と言われればそうではない。

    津村記久子さんという作家さんが好きだ。彼女の文章は淡々としているように見えて、主人公の正義感が強く、内に秘めたエネルギーが溢れ出していて、いつも圧倒される。くだけた文体でユーモアを言ってきたかと思えば、皮肉っぽく鋭い指摘をしてきたり。そういうところが結構好きだ。わたしにとっては初めての津村さんのエッセイ。わくわく。

    日常の細々したことに対する見方にクスッと笑ってしまう作品がたくさん入っていて読んでいて飽きないが、こちら側の持っている知識量と、彼女が好きなものに対して抱いている執着心についてゆけずに、いくつかの作品で置いてけぼりを喰らっている…!ドラクエとかは特にそうだ。

    独特のリズム感やものの見方には津村さんらしさを感じるものの、わたしは彼女のエッセイよりも、小説の方が好きだなぁ、と改めて認識する。
    でも、津村さんがこのエッセイでわたしたちに届けたいものは、「何も得られない読書」「どうでもよさ」であることのようだ。

    となると、どうでもいいものを書いた津村さんに対して、わたしが改めて小説の方が好きだなぁ、なんて思うのは、これはたぶん、わたしが読書から得たいものがどうでもいい、ではないからなんだろう。
    ちょっと息抜きに、とか思いながら、結局わたしは何かを期待してこの作品を手に取った!
    が!しかし!
    ここには何もない!
    本当に!何も残っていないし、何も残らない!
    でもそのことの素晴らしさよ…!

    最近は重ための読書に疲れていたので、ちょっと小道に逸れる予定が、小道の手前で足踏みをしていたらしい。
    読書を続けることで、やっぱりわたしは読書から何かを得たいんだなってことに改めて気付かされたし、そういう気付きがあるから、読書に疲れても、読書を続けるって大切なんだなって思った。
    読むことを完全にやめていたら得られなかった感覚が、そこにはあった。
    津村さん、ありがとうございます。
    あとがきで津村さんが仰った通り、次は津村さんの小説で、お会いしたいと思います。

    • naonaonao16gさん
      たけさん

      こんにちは!コメントありがとうございます!

      禅問答(笑)そうかもしれませんね(笑)
      エッセイを休憩に読ませていただく...
      たけさん

      こんにちは!コメントありがとうございます!

      禅問答(笑)そうかもしれませんね(笑)
      エッセイを休憩に読ませていただくことって結構ありますが、いつもなにか「そうだよね~」と共感に溢れたり、印象に残ったりするのですが、何も残らないって!(笑)

      いやー、まあ、疲れた時に止めるか続けるかは人それぞれだと思いますし、止めたことによって次捗るかもしれないですしね!なんともいえません。
      トレーニングはさぼりつつ続けてます(笑)
      2021/09/14
    • たけさん
      naonaonao16gさん!

      「共感に溢れる」ってその体験そのものが、すでに「何か残している」気もするのですが…
      「共感に溢れる」って日...
      naonaonao16gさん!

      「共感に溢れる」ってその体験そのものが、すでに「何か残している」気もするのですが…
      「共感に溢れる」って日常の中でなかなかできないですよ。

      トレーニングはさぼりつつ続ける!
      「つつ」の部分が重要。そうでないと「さぼり続ける」になる笑
      実際、持続させるためには、「さぼりつつ」はとても大切だと思うんですよ。
      追いつめすぎずゆるやかに続けてください♪
      僕もそうしてます笑
      2021/09/14
    • naonaonao16gさん
      たけさん

      そうですね!共感に溢れる、は凄いことです!
      この作品も、わたしがもう少しドラクエに詳しかったらもっと共感に溢れたのかもなぁ…なん...
      たけさん

      そうですね!共感に溢れる、は凄いことです!
      この作品も、わたしがもう少しドラクエに詳しかったらもっと共感に溢れたのかもなぁ…なんて。

      そうなんですよね、毎日絶対!とするとやめた時に復帰できないんですが、サボりつつだと意外と続くんですよね。たまにトレーニングの内容を見直してみたり。人生と一緒ですね…何事も力まず続けること…
      2021/09/14
  • 『ポトスライムの舟』で知った津村記久子さんのエッセイ集
    独特の視点と語り口調で、ふとした瞬間に手に取りたくなる作品
    特にお気に入りなのは
    「いっそ妖精ということで」
    →日常生活でたまに出会うびっくりするような人や現象はもうそういう妖精がいるんだということにしとこ?という大胆な諦め方が気持ちいいし、実際そう思うといろいろなことを流せるように思う

    「何者なのだアレックス【「毎日スペイン語 エリのドキドキ☆スペイン留学」の感想】」
    →語学の勉強あるあるのその設定無理じゃない?という会話例へのツッコミ集

    「数珠のようなものと弟」
    →津村記久子さんの弟さんとのお話。弟さんと弟さんの勤め先の入居者さんとの関係や津村さんと弟さんの関係がなんだかさっくりしてていい


  • ずいぶん長いことかかって読み終わった。
    終わってしまうのがとても惜しかったのだ。

    《どうでもいい話をしたいときに、この本をぱらぱらめくってみてほしい》と津村さんが言う通りに、わたしはかなりこの本に救われた。

    わたしは特に、平日仕事でクタクタになり何も考えたくない、明日もあるし早く寝なければ、でも、という時に開いて、一項ずつ読んでいた。

    芥川賞を受賞された直後のエッセイとは思えないほど、津村さんの面白おかしい日常の疑問やこだわり、好きなことものが飾らずに語られ、
    不思議とこちらも、くだけた心地よい感覚になる。

    この頃の津村さんは、会社員をされながら執筆活動をおこなわれていた。
    津村さんの作品には“働くということ”についてが下地になっているものが多いけれど、
    どの作品もため息が出るほど同意してしまうのは
    こうして会社員として“働く”を見つけて観察して眺めてこられたからなのだろうと思う。
    だから、このエッセイなんかは、気の許せる同僚と話しているような気持ちにもなれるような気がしている。

    津村さんの“どうでもいい話”は疲れ切った心の話し相手になってくれ、重たい気持ちが吸い込まれるように軽くなる。
    なんだかおしゃべりな本なのだ。

    友達とも気楽に飲み話せない今、
    そんな気楽なおしゃべりが、やけに染み入る。

  • 面白かったです。すごくどうでもいい事ばかりですけど、とても落ち着きます、読んでいて。
    こんなどうでもいい事で良いんだ…ってちょっと気力が戻る感じです。非難の言葉ばかりが目に付く日々に疲れるので、津村さんのエッセイ心地良いです。
    どうでもいい事だけど、でも心に残らないかというとそうではないのですごいです。小説もエッセイも絶妙だなぁ。
    『「女が働くということ」についての原稿』の、「わたしには、わたしが稼いだお金で、こうやって遊べてて、それが大事やと思う」という津村さんのご友人の言葉良かったです。
    高校野球のお話と、数珠のお話も好きでした。
    「今年も、劇的な成長など期待せずにやっていこう。」

  • 著者があとがきで語るとおり、「何も残らないし、ひたすら地味で意味も無いけど、読んでる間少しらくになった、と感じ」ることが出来る良い本でした。「自慢話も、ちょっといい話も、お説教も、他人の不幸も、全部疲れるけれど、何かちょっとだけ読みたい」時に最適。

  • 図書館で貸出延長して4週間手元においてだらだら読んだ
    それぐらいがちょうどいい感じ

  • 程よい庶民派(?)な貧乏性ぶりと、世の中のことに割と淡白で淡々と検索して「へー」と感じたことを活字にしている、そんな感じが所々本業の小説作品とも重なって絵面を想像してしまう。
    表紙裏の解説文には「アッパッパーみたいなのを着て」という部分を取り出して「脱力系」と称されているが脱力系、という表現ともまた違うかな。アッパッパーなる言葉はこの本で初めて知りました(笑

  • ちょうどよい緩さと日常を切り取る感性がよき

  • やっと読み切った、、面白くなかった…
    正直どうでもいい話がほとんどで残念。特に星座占いの話など、気のせいじゃない?… としか思えなかった。
    二度寝だけを楽しみにしているのんびりほのぼのした作家さんの生活が垣間見れるのかと思ったので期待はずれ。
    小説は面白いのかも。


  • 面白すぎる。低めの温度で日々のあれこれについて話している。この抑制されたユーモラス、本当に面白い。自己肯定感低そうなところ、自分と重なっていよいよ愛読書。

    • シャンタンさん
      同感です^ ^
      同感です^ ^
      2021/12/07
    • ナホさん
      こんなふうに日常を面白がれたらなんだか生きていけるような気がします。
      こんなふうに日常を面白がれたらなんだか生きていけるような気がします。
      2021/12/16
    • シャンタンさん
      そうですね〜、飾らないありのままな話が日常の力みやすい自分をゆるゆると緩めてくれる感じですかね。

      本を読みたいけどやっぱり読みたくないとい...
      そうですね〜、飾らないありのままな話が日常の力みやすい自分をゆるゆると緩めてくれる感じですかね。

      本を読みたいけどやっぱり読みたくないという訳がわからない気持ち…だったか、言い回しは多分違いますけど、本を書くような方でもこんなことがあるのねと、ほっとしたりにやっと笑いたくなる感じです。

      真面目に読まなくても分からなかったら飛ばしても怒られなさそうなところも気に入ってます。読んでも疲れないし頑張らなくていいので手元に置いておきたい一冊です^ ^
      2021/12/20
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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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