『存在と時間』に代表される「存在への問い」を、従来の哲学言語ではなくハイデガー独自の省察に基づいた新たな表現によって捉え直し、「存在への問い」を更に深化させていこうとする後期ハイデガーの思索が端的に示されている。独自のターミノロジーによってなかなか理解し難い著作ではあるが、「理性」に人間の尊厳を見出そうとするような「ヒューマニズム」という西洋の伝統的思考を批判し、「存在の真理」を問うことこそが、真の「ヒューマニズム」へとつながるというハイデガーの逆説的な主張は、それに賛同するかどうかはともかくとして、西洋の伝統的思考=西洋哲学を学んできた者にとって、それを内在的に突き抜けていく一つの道を示してくれているといえる。その点で、この著作の触発的意義はまだまだ消えていないだろう。
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- 感想投稿日 : 2013年3月19日
- 読了日 : 2013年3月19日
- 本棚登録日 : 2011年4月21日
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