雪沼というある一帯に住む人たちの「市井の人々の物語集」といった趣です。
ある人々の、どこにでもある、なんでもないような日常の断片を切り取り、時に町に住む人同士の思いがけない繋がりを描き出します。
本作では、物事に対する様々な見え方を投げかけます。
例えば「スタンスドット」にある、寂れてしまったボーリング場の閉鎖という出来事をとっても、亡くなった妻と人生の大半を捧げたオーナーにとっては人生の晩年の大きな節目になるものの、「河岸段丘」の田辺さんにとっては、「友人が手がける、得体の知れない機械の解体作業」というコントラストで描かれます。
それは残酷なことでもなんでもなく、ありふれた日常の一コマなのだ、ということを本作は示します。
連作の中で著者は「絶対的な主役/脇役というものは存在しない」ということを示しているような感じがします。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年4月22日
- 読了日 : 2019年4月22日
- 本棚登録日 : 2019年4月18日
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