絵本『まあちゃんのながいかみ』や幼年童話も大好きだけど、やっぱり読みたかった高楼方子さんの長編。
幻想的で美しく、思春期の心の襞が鮮やかに描かれ、切なくじっくりと読ませられた。
待った甲斐がありました。
装画は『夏の朝』本田昌子/作と同じ木村彩子さんだ。緑溢れる絵が夏の日を、水彩の淡さが物語世界の不確かさを感じさせる。
木村彩子さんのこの2冊の本がなんとも不思議な対比をなしている。
『夏の朝』は古い日本家屋『黄色い夏の日』は古い洋館を舞台に、『夏の朝』は蓮の花『黄色い夏の日』はキンポウゲの花がいちめんに咲く庭で、『夏の朝』は中学2年の少女『黄色い夏の日』は中学1年の景介が、どちらも夏の日々に時を越えた旅をする。
景介は自分の体験している非現実を冷静に判断し、畏れを感じながらもその世界を受け入れていく。
ファンタジーにすんなり入っていく幼い子とは違う、中学生という年齢の感覚の描き方が現実的であり説得力があった。恋する気持ちの切なさも痛いほど伝わってきた。
洋館に住む小谷津さんが魅力的で、家具や小物に至るまで素敵。
『物語のもつ力』に想いを巡らしました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年10月17日
- 読了日 : 2021年10月16日
- 本棚登録日 : 2021年10月17日
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