油絵の表紙絵が妖しくなまめかしい本作。
亡き女優の母とは似ても似つかない醜い容貌を持ち、叔母から疎まれ、同級生に虐められる少女、累(かさね)。
母の形見の口紅を塗って口づけをすると、他人の顔と交換できる不思議な力を得て、成長した累は、眠り病の美貌の新進女優の代役となり、天性の演技力で舞台に立ち、脚光を浴びていくが…。
他人の顔を手に入れることは他人の人生を奪うこと、その罪悪感と葛藤しながらも舞台女優として成功を掴んでいく貪欲な姿、元の顔に戻って正体がバレてしまうかもしれないハラハラ感、素顔の時の惨さと舞台に上がった時の晴れやかな高揚感のめくるめく落差の描写が、ページをめくらずにいられません。
美への執着と芸能界での成功の執念は『ヘルタースケルター』(岡崎京子)にも通じる世界観ですが、本作は怪談から着想を得ており、絵も現代作品としてはやや古風な描線で、あたかも往年の大映ドラマ(80年代に流行した、大袈裟な演出、泥々の愛憎劇が繰り広げられたドラマシリーズ)を見ているようです。
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カテゴリ:
漫画
- 感想投稿日 : 2016年1月19日
- 本棚登録日 : 2016年1月19日
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