2016年に出版された若き徒目付の片岡直人を主人公にした短編集『半席』の続編です。
今回は長編で、前後半でそれぞれ1つの事件が描かれます。後のテーマは直人の目の前で行われた殺人事件。正気を失い被害者を自分が苛め殺した男のお化けと間違えた犯人が切り殺す。ただ、直人は被害者が切られる直前に笑ったことに引っかかり「なぜ?」を追い始めます。
一種の心理ミステリー。それによって犯罪や処罰そのものが変わる訳では無いのだが「真の動機」を探るうち、思わぬ背景が見えて来て、さらにその裏には・・・と物語は深く深く沈んで行きます。
切れ味鋭いというよりも重く力強い文体で記される本書はミステリーとしての出来も良い。しかし、「心理」物ゆえに設定を江戸時代に置く必要はあまり感じられない。それを補う目的か、江戸中期以降の諸外国の急接近と、それにより重要になった海防の話が、本筋のミステリーに沿う形で時勢として語られる。
『半席』を読んだ時、青山さんにとってこのシリーズは藤沢周平さんの「用心棒日月抄シリーズ 」のような位置付けかもしれないと思いました。でも、この作品を読んで少し変わりました。藤沢さんの場合、本筋は別に有って「用心棒日月抄シリーズ 」は軽く楽しみながら書いた作品だと思いますが、こちらのシリーズは少々重すぎ。むしろ青山さんとっては本筋なのかもしれません。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
歴史・時代
- 感想投稿日 : 2021年8月24日
- 読了日 : 2021年8月23日
- 本棚登録日 : 2021年8月24日
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