戦国末期、秀吉と同様に百姓から出発し、最終的には筑後三十二万石の国主となった田中久兵衛の一代記です。
食べることさえ苦労し先の見えない百姓を嫌い、朝井の家臣・宮部善祥坊に仕える小者からスタートし、秀吉、家康と渡り歩きながら戦国時代を生き抜きます。飛びぬけた才能がある訳では無いのですが、戦地では先陣をついて突っ込んでいく物狂いとなり、普段は穏やかで治世に必要な知識を積極的に吸収し、次第に頭角を表していきます。
岩井さんは歴史小説の中でも、上の人間の我儘や無茶ぶりに振り回される中間管理職の奮闘を描く作品が多く、それはそれで面白いのですが、この作品は小粒ながら自らの才覚で生き抜いて行く魅力的な人物を主人公に据え、非常にしっかりと読み応えのある歴史小説でした。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・時代
- 感想投稿日 : 2021年4月2日
- 読了日 : 2021年3月30日
- 本棚登録日 : 2021年4月2日
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