かつてこんなに主人公を愛せない作品があったろうかと思う。主人公の少年の傲った性格がいちいち癇にさわった。しかしそれが作者の意図であるようにも思われる。バーティミアスと言う悪魔に批判的な真意を語らせることで、「悪魔の言うこと」と言う逃げ道をつくりつつ、実はその皮肉こそが核心をついていたりする。
本作はYAファンタジー作品だが、英国作品らしい、多分な毒や皮肉が含まれている。人間達よりも、彼らに「悪魔」と呼ばれこき使われている妖霊達の方がずっと懸命に動き回ったり、合理的だったり、気持ちの良い性格だったりと、好感がもてるのだ。
ただ、いくら作者の意図であれ、主人公を愛せないと言うのは、読者にとって苦痛に他ならない。そのためか、読み進めるのにかなり時間を要してしまった。少々比喩表現、情景描写がわかりにくい部分も。映像として頭に浮かべるには結構な想像力と理解力がいる。
ところで英国って一人称の作品がやっぱり多いですよね。一人称は嫌いじゃありませんが、説明過多が目立ってしまったりしますね。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ファンタジー(海外男性作家)
- 感想投稿日 : 2012年8月12日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2012年8月4日
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