ああ玉杯に花うけて 少年倶楽部名作選 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社 (2014年4月11日発売)
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感想 : 6
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戦前の旧制浦和中学校を舞台とした小説。学園生活だけでなく、社会の貧困問題なども描かれる。冒頭から浦和町の助役の息子が権威を背景に豆腐屋の豆腐を無料で食べる。日本の公務員は途上国並みに利権にまみれて腐敗している。『青天を衝け』第27回「篤太夫、駿府で励む」(2021年9月19日)でも官軍の兵が町人への強請りたかりしているとの指摘がなされた。

「商売をしたからって助役の息子に食われてしまうばかりだ」との台詞がある(44頁)。これでは真っ当な商売ができない。公務員に上納しても商売が成り立つくらいに頑張るような精神論根性論は有害である。公務員に上納しても商売が成り立つならば、その分、消費者から搾取していることになる。そのような商売は有害である。

しかも、抗議した人を警察を使って有罪にした。さらに冤罪を作り上げようとする(122頁)。どうしようもないほど悪辣である。一方で助役の息子の改心は、あまりに物語として都合良すぎて興覚めである。とはいえ改心した人物と友情物語にならずにフェードアウトした点は良かった。昨日の敵は今日の友展開は一層の興覚めである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年9月20日
読了日 : 2021年9月20日
本棚登録日 : 2021年9月20日

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