家康の海

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  • PHP研究所 (2022年12月8日発売)
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徳川家康の外交を描いた歴史小説である。NHK大河ドラマ『どうする家康』の予習になる。江戸幕府は鎖国の印象が強く、江戸幕府を論じる場合は貿易重視の織豊政権と対照的に位置付けられる。平氏政権、室町幕府、織豊政権が西国基盤、商業、海運重視、鎌倉幕府と江戸幕府が東国基盤、農業、陸運重視というように。しかし、家康個人は貿易を重視していた。家康の時からキリスト教禁教の動きはあったが、後の鎖国政策が延長線上にあるのか、転換したのかは議論がある。

オランダ船リーフデ号が慶長五年(一六〇〇年)三月一六日に豊後に漂着した。家康は南蛮人(スペイン、ポルトガル)と紅毛人(オランダ、イギリス)の相違を理解し、貿易相手として後者を重視するようになる。

それはキリスト教の布教と貿易をセットにするカトリックよりも、布教しないプロテスタントを重視したと説明される。しかし、キリスト教以前に安易に「大丈夫」と答えるスペイン人の無責任さに不満があった。家康はスペインに浦賀に来航して貿易することを依頼した。宣教師に問い詰めたが、「大丈夫。大丈夫。もうすぐ上手くいきます」と誤魔化された(102頁)。家康の家臣の向井将監は「スペイン人でしたら、何を頼まれても大丈夫、大丈夫と、調子よく引き受けます」と呆れている(39頁)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年10月18日
読了日 : 2023年10月18日
本棚登録日 : 2023年10月18日

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