これが答えだ!: 新世紀を生きるための108問108答 (朝日文庫 み 16-3)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2002年5月1日発売)
3.27
  • (10)
  • (13)
  • (50)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 186
感想 : 21
3

 著者による人生相談、というよりは人生相談をダシにした著者の社会学に関するトピック紹介本か。あとがきにもあるとおり、著者の多岐にわたる活動と言説をフォローするのにはうってつけかもしれない。ちょっとクセはあるが、著者の社会学入門としても十分読めるようになっている。

 ただ、最初の章「性愛」と最後の章「宮台」にかなりの紙数が割かれているのをどう捉えるか。私は「そういやぁこの人、ちょうどオウムなんかが出てきた頃、『朝生』でテレクラだの援交ギャルだの話題にしてジジババ達を敵に回してたっけ。(当時は彼の言説をほとんどフォローしてなかったけど)こんなこと言ってたのかぁ~、へぇ~なるほどねぇ~」とサラッと読んだが、人によっては不快感や反発を感じるかも。また、本書が書かれたのは2000年前後で、今よりも"若手"として論壇を挑発するような書き方がなされているのもあって、そういうのをさっ引いて読まないとイラッと来る人もあるかもしれない。

 そういう多少のクセはあるし、時代性を感じさせる部分もあるが、それでもやはり一読の価値は十分にある。例えば本書では、学校や教育、家庭や社会の問題を多角的に、時には重複しながら取り上げている。そこから見えるのは、これらの問題がが相互に関連し合って影響を与え合っており、どれか一つだけを取り上げて手直しするだけじゃどうにもならない、という指摘である。当たり前と言えば当たり前だが、問題が起こる度に(厳罰化やモラルの向上といった精神主義的なことを吹き上げるだけで)問題の検討・考察もろくになされないのは本書執筆当時も現在もそう変わらないので、やはりこの指摘は重要であろう。
 最近でも、少し前に公立高校体育科の「体罰」問題や女子柔道の「体罰」問題が取り沙汰され、スポーツ界の体質が問題視された。が、あそこで問題とされた「体罰」的なアプローチは何もスポーツ界に限定された話ではない。勉強の世界でも、無意味な筋トレや指導者の嗜虐性が発露しただけとしか思えない「厳しい指導」と似たようなものはゴロゴロしている。個人的には「なぜ?」がちゃんと説明してある良心的な参考書が増える中、相も変わらず上っ面のルールを並べるだけの"昔ながらの参考書"や、自分たちが経験してきた暗記と反復演習をそのままを子供達にする探究心も何の芸もない指導者には絶望すら覚えるところである。
 一つの問題が発生したとき、表層的にそれをダメだと片付けたところで、同じような問題は形を変えて繰り返されるだけである。みんなもっと落ち着いて、ちゃんと考えようぜ…と思ったとき、本書で紹介されている議論はオルタナティブな視点を提供するものとして使えるように思う。

 本書を読んでいて、90年代後半から2000年代にかけて、「朝生」で老人相手に挑発的な物言いをしていた(逆から言えば挑発的な物言いでオジサン連中から集中砲火を浴びていた)頃の著者の姿が思い出された。何だろう、この妙な懐かしさは…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年2月26日
読了日 : 2013年2月26日
本棚登録日 : 2013年2月26日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする