「遠くの潮騒の音が、ざわざわと、記憶の産毛を、なでる」
10年ほど前にはまだそこここに残っていた昭和の面影が、日本のいたるところから急激に消えていく。
おばちゃんたちがお店の人と無駄口を叩きながら買い物を楽しんでいた光景はなくなり、シャッター商店街が軒をつらねている。歩いていくのはコンビニ、クルマではロードドサイドの大型スーパーでお買い物だ。どこの街の駅前も同じサラ金とチェーン居酒屋の看板で、のっぺりした表情。旅行者は駅に降り立っても、バス路線は「ある」という名目だけの一日数本。クルマ利用以外の旅は過酷になりつつある。
著者は「今日、佳景に出会うことは大海に針を拾うがごとくますます至難になりつつある」という。
昭和に生きた我々の眼に残る人間の情や自然の風景を見ることは、都会以外でも稀になった。
しかし記憶の底にあるものが、何かにであうことで、ぐっとリアルに自身の心に迫る時がある。
小さいもの、見えにくいものの中に、真実は潜んでいる。
日本浄土を旅していくのは、藤原さんだけではない。
藤原さんの「眼」に親近感を感じるといったら、彼は「しゃらくさ〜い」といいそうだけれどね。
浄土へのガイドブックがここにある。
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エンタメ
- 感想投稿日 : 2008年11月11日
- 本棚登録日 : 2008年11月11日
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