欲望について

  • 白揚社 (2007年12月1日発売)
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賢い人を幸福にするにはほとんど何も要らないが、愚か者を満足させるものは何もない。たいていの人が惨めなのはそのためである。 ラ・ロシュフコー

の一文から始まるが、それに集約されているような本。

私たちは日々、自分の中から湧き上がるありとあらゆる欲望(食欲、物欲、富、名声、異性、称賛 etc)に突き動かされ、そして苦しんでいる。

それにもかかわらず、多くの人は欲望を満足することこそが幸福に繋がると信じて活動している。

が、しかしそれは本当に幸福をもたらすのか?

という問いからスタートした本書。

中身はこんな内容
1. 欲望の潮の満ち引き
2. 他者
3. 欲望の水脈をたどる
4. 欲望の源泉
5. 欲望の心理学
6. 欲望の進化
7. BIOS(生物学的インセンティブ)
8. 人間の置かれた状況
9. 仏教、キリスト教、イスラム教
10. アーミッシュ、フッター、オナイダ
11. 哲学と欲望
12. 変わり者

というように、欲望の現状 ⇒ 欲望の原因。メカニズム ⇒ 欲望との良い向き合い方 というように系統立てて書かれており、理解しやすい。

特に我々日本人にとっては仏教国であるがゆえに煩悩という名で古くから付き合ってきた。
ただし、それは今のように懇切丁寧に系統立てて科学的に説明されているわけではないので、どうしてもわかりにくくなっている感じがする。

なので、仏教に興味がある人が読んでも理解の一助になるのではないか。

以下、良いと思った考えなど
・私たちが他者を求めるのは反応が欲しいためだ。私たちのほとんどは自信がない。

・人間の真の幸福が宿るものとして、他者の頭はあまりにも惨めな舞台である。

・我々は人に幸福だと思わせるためには、実際に幸福になるためよりも、はるかに労をいとわない。

・私たちが羨望の虜になるのは、たんに他人の生活よりも自分の生活の方が良く知っているからだ。

・日々の生活にたえず欲求不満を抱く人の多くは知的能力を欠いているか、知性があるものの使っていないか。

・手に入れたとたん好きでなくなるようなものを欲しがることがある。

・今持っているモノに満足しなくなれば、また新しい欲望を形成する。

・生きようとする「生物的」意志が砕かれたとき、人間は生きることを「証明」しようと知性がどれだけ努力しても効果がない。

・BISは生物の生存・繁殖に有利な事は「快」、不利な事に「不快」を示すプログラムだ。それは生きることに有利であってもそれは個人が幸福かどうかは意に介さない。

・欲望は道徳的に悪いからでなく、克服しない限り私たちが苦しむ。

・成功と満足は違う。というよりかなりの程度まで相容れない。

・自分の欲望に何らかの歯止めをかけない限り、満足することはない。

・セックスに関わる快楽は、ドラッグ同様にこちら側に相当の犠牲を要求する。特に異性を性的に判断するなど

・人間に最も強烈な楽しみを与えるのは、そんなものからでも楽しみを見出せる力である。

・楽しみの奴隷にならないやり方で楽しめ

・受け入れた時はじめて、人は受け入れたものの真価を認めることができる

・欲望を達成したら何が私に起きるだろう?達成しなかったら?多くの場合、全く変わらない。

・隣人から尊敬されたいという欲望は、自分から見て尊敬すべき存在でいたいという欲望よりも強い

・この人の人生が価値あるものなら、生きることに熱中して、私を批判する時間などあるはずがない。

極論、 唯我足るを知る ということです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年1月4日
読了日 : 2021年1月4日
本棚登録日 : 2021年1月4日

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