さよなら! 僕らのソニー (文春新書 832)

著者 :
  • 文藝春秋 (2011年11月18日発売)
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成功し成長を続けたベンチャー企業において、やがて創業者が第一線から離れ、普通の大企業に脱皮するということがいかに難しいか。本書はソニーの内情を題材にしているが、その意味で多くの企業にとっても非常に示唆に富んだ一冊である。

本書では、技術にこだわり革新的なモノづくりを進めてきたソニーが、創業者の引退とともに、製品へのこだわりをなくし、米国流の経営手法に基づいた短期的な数字を目標にした会社に変わったことが現在の凋落の一因であると指摘し、出井氏、ストリンガー氏の経営を批判している。たしかに豊富な内部取材に基づく具体的なエピソードの数々は説得力がある。

しかし、創業者というビジネスオーナーが明確で、その意思を反映させることそのもの戦略そのものであるベンチャー企業が、やがて巨大化し、創業者が引退した後に普通の大企業に脱皮する際には、株主、市場、従業員を納得させるために経営数値にこだわるのは当然だろう。問題は、数値自体がが目的化し、ビジネスの方向性が失われることだろう。

創業者なきあとの普通の大企業であっても、いかにビジネスオーナーシップを明確にして、成長のダイナミズムを維持するか。最近のAppleなどをみていても同様な課題に直面しているようであり、他の多くの企業にとっても、ソニーの事例は示唆に富んでいるのは間違いない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2013年6月6日
読了日 : 2013年6月6日
本棚登録日 : 2013年6月6日

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