「やらなくちゃならない仕事」を「やりつづけたい使命」に変えた女性の一人語り。吉祥寺の駅前の一坪の小さなお店だけど星のような光を放っています。ダイヤ街の道の真ん中の大行列(他のお店の邪魔にならないように?)を見たことがありますが、その光を目指してのちょっと異常な風景なのでありました。そんなに羊羹・最中食べたいの?その光は、もしかしたら彼女が仕事を始めて10年目に感じた「炭火にかけた銅鍋で羊羹を練っているときに、ほんの一瞬、餡が紫色に輝くのです。」という瞬間の発光か?いやいやそれは商品の輝きでも店の輝きでもなく稲垣篤子という人間の放つ強い光なのでありました。ものすごい負けん気の持ち主です。屋台時代の雪の日の涙の想い出、高校の同級生が通りかかったとき顔をしかめたり、目をそむけた一瞬の記憶、そしてなんとしてもカメラを学ぼうとする意志、そして夫とのフィフティフィフティの関係、障がい者雇用の補助金辞退の意地、強い強い!なににもまして、父との師弟関係の強さ!まさに、羊羹版「巨人の星」!しかしもしかしたらすべての職人魂、商売道として、どこにでもあった物語だったのかもそれません。その意地がどんどん消えていくのに比例して、吉祥寺の行列が伸びるのでは?今となっては絶滅危惧種のような欲のない光です。そう、中島みゆき「地上の星」はここにも輝いていました。
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- 感想投稿日 : 2018年8月20日
- 読了日 : 2018年8月20日
- 本棚登録日 : 2018年7月15日
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