SYNC

  • 早川書房 (2005年3月29日発売)
3.64
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本棚登録 : 304
感想 : 40
5

カオス、複雑系、同期現象の世界について、
その道の専門家であるS.ストロガッツが
非常に分かりやすく、知的好奇心を刺激するかたちに
まとめてくれている読み物。

ガリレオの時代からアインシュタインに至るまでの
要素還元主義的な線形自然科学では決して
説明がつけられないような「非線形」の見方で、
信じられないほど広範の現象を「科学的」に捉える
ことができるという話は、
驚くべきことだ。

量子レベルの物理現象、振り子時計の共振、橋の共振。
生体における活動周期(睡眠サイクル等)、ホタルの群れの発光、
一国の発電網の繋がり方、人間関係のネットワーク、
交通渋滞、ヒット商品の流行の仕組みなど、
生物・非生物を問わず、また社会・自然をも問わず、
そこに「相互の影響」がある場合には、
非線形の同期(トップダウンの意思ではなく、
それぞれの振る舞いが集団のトレンドを構築する)が起こる。

この同期現象を意識するかしないかで、
少なくとも社会科学に関しても、
事態の本質を捉えた議論が成り立つかどうかの成否が
まるで異なってくるように感じられるのは
私だけではないだろう。

本書の扱う非線形科学それ自体が、
そもそも辺境(?)や傍流(?)の風変りな研究者たちが
ばらばらに取り組んでいたことが、
何かのきっかけで研究成果が共有されて、
そこから類似性に気づき、
思ってもみなかったような方向に転がりながら
いまなお未開の地を切り開きながら成長しているような
状況にあることを、
著者は生き生きと語ってくれる。

師であるアート・ウィンフリーをはじめ、
出てくる人物のエピソードが非常に面白い。
ブライアン・ジョセフソンにしても確かにある時期から
オカルトに傾倒していることを「科学界」は残念がっている
わけだが、でもそういうぶっとんだ方向にそもそも
進むことを躊躇わないような人だったから、
超伝導トンネル電流の予測のような常識はずれの
仮説を出せたのかもしれないな、と思う。

21世紀の科学は、まちがいなくこの「非線形」な
現象を扱う
それも、細分化された学問領域に留まらず、
自由に、マクロにミクロに横断しながら、
理解を深める姿勢が、コアになってくると感じた。

そもそも科学を扱ったり、文明を作ったりしている
私たち人間自身が、
非線形な発生現象からなる生きものであって、
また人と人が関係を非線形に結びながら、
何事かを成していく存在なのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自然科学
感想投稿日 : 2013年2月16日
読了日 : 2013年2月15日
本棚登録日 : 2013年2月15日

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