読者ハ読ムナ(笑) ~いかにして藤田和日郎の新人アシスタントが漫画家になったか~ (少年サンデーコミックススペシャル小説版)

  • 小学館 (2016年7月17日発売)
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「読者ハ読ムナ」藤田和日郎(著)
マンガは、日本の文化でも世界に誇れるものだと思う。といっても、子供の頃は、よく読んだが、大人になってからは、「美味しんぼ」「ゴルゴ13」「島耕作」くらいしか読まなかった。
そうだ、小説を書くなら、マンガの手法を取り入れた方が、小説のメリハリがつくかもしれないとおもった。しかし、マンガは編集者の存在があり、その編集者たちは、マンガのネーム(絵コンテ)を1ページ見ただけで、良いマンガかどうかが判断できるというからすごい。マンガの世界は、絵がうまいだけでは、マンガとして認められない。
本書を書いている「藤田和日郎」が、どんなマンガを書いている人(調べると「うしおととら」「からくりサーカス」「月光条例」「双亡亭壊すべし」。ふーむ。知らん。)か知らないが、「マンガ創作論」として優れているという評判だったので、読んだ。
マンガの創作には、やはり大きなルールがあることを知り、勉強になった。藤田和日郎は、たくさんの弟子を独立させたことで、有名らしい。つまり、この藤田和日郎は、少年サンデーによく描いている人らしい。たくさんの弟子を作るというのは、商売敵を作るわけだから、「お人好し」なんでしょうね。職人としてもれば、日本ではあまりないタイプの人である。
ムクチキンシ!
事務所には、無口禁止(ムクチキンシ)と書いてある。このムクチキンシという教えは、実に素晴らしい。確かに、職人の世界は、無口で、ワイワイガヤガヤしていない。
「コミュニケーションを楽しくするようにして、相手からいろんなことを引き出すのは、漫画家を続けていく上で損ではない。うちの仕事場は、絵より何よりまず会話だからだ」という。
「思ったとおりのことをすぐ言う」と言うことではなく「相手と会話のキャッチボールをする」
ひとの話を聞かない奴がいくら主張しても、相手がキミの話を聞きたいか?という。
コミュニケーションの取り方も、なぜそんなことしているのかという興味を持って接することだともいう。単純にワイガヤするわけでもない。仕事の上の話につながるムクチキンシなのだ。
「人に対して敬意を払えない人間はどこの業界でもダメですわ」というのが基本ルールなのだ。
おもしろいこと、人を感動させること。
「おもしろいものを描きたい。そのためにはなんでも吸収したい」という姿勢なのだ。
ラブコメで、主人公が女の子に好かれる理由もワカンねぇのに、モテまくるような奴は大嫌いだ。
主人公を立たせて、その後で世界観を作るのが、少年漫画の本道だよ。少年漫画には、「ひとの心が変わるドラマ」が必要だという。そうか。目標がデカイなぁ。人の心をかえるということは、少年漫画のルールなのだ。確かに、「あしたのジョー」なんかには、影響されたなぁ。
漫画のキャラクターで一番重要なのは表情だ。その言葉のさらに奥にある本質は「目」だと思う。眼球に感情を込めなければいけない。目に力を入れないと読者はつかめない。漫画はイラストではない。止まった絵になったら、それは漫画の絵ではない。キャラクターに魅力を与えられる人。そのやり方をきちんと言語化できる人。
やる気を持っていることとフットワークの軽さは、運を自分に向ける重要な要素だ。
マンガ独特のルールもある。目をきちんと描くことをポイントにしている。
その上で、キャラが立つ。キャラの特徴と弱点をうまく添える。そして、大きな世界観を浮かび上がらせる。最初に俯瞰の絵を入れるなりして、主人公が今いる場所をわかるようにする。まずはドラマの世界へ招待する。その後何をする話なのかと言うテーマを示す」「誰と誰がなんのために戦っているのか」を明らかにする。
さらにどうう読後感を持って欲しいか?スカッとして欲しい。愉快な気持ちになって欲しい。ちょっと寂しくなって欲しい。泣いて欲しい。読者目線で、ちゃんとした人。はっきりした感情を持つ人。いい奴であること。意外性を用意して、期待通りに終わることだ。1シーンに一ついいセリフがあればいい。正義のやつが勝つ。そこには、犠牲を伴う。そうでないと感情移入ができない。
ふむ。少年漫画の成り立ちは、多くのルールの上に成り立っているのだ。面白かった。
ここまで、少年漫画のルールを理解しているのなら、弟子は育つでしょうね。納得。ガッテン。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アニメ/マンガ
感想投稿日 : 2021年7月5日
読了日 : 2021年7月5日
本棚登録日 : 2021年7月5日

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