戦火の馬

  • 評論社 (2011年12月1日発売)
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第一次世界大戦直前のイギリス。サラブレットの血を引く子馬が、ある農家に買われていった。その子馬はジョーイと名付けられ、農家の息子アルバートが愛情こめて育てた。しかし父親は借金返済のため、ジョーイを軍隊に売り払うのだった。

馬のジョーイの視点で語られる戦争の物語。騎兵隊としてフランスの戦地へと赴き、戦いの渦に巻き込まれ、混乱の中ある時はドイツ軍の荷馬車引きとなり、ある時はフランス農家の世話になり、ある時は激しい戦火のもと命からがら逃げることとなる。
そんな時にジョーイのそばには、ジョーイを気にする人が必ずいてくれた。ジョーイの美しさや強さに惹かれた人が。
しかし戦争はそんな人との別れを予告なくもたらす。愛してくれた人との別れ、苦楽を共にした人との別れ、共に助け合った仲間との別れ。どの別れも不意に訪れ、感傷に浸る余裕もなく次々に戦争の嵐が襲いかかります。
馬のジョーイの目を通して書かれるためか、それらの別れは実に淡白なものです。しかし実際に戦中での人の生き死にや別れは、そんなものだったのかも知れません。

物語終盤に訪れるジョーイに大きな運命。希望へと繋がるラストシーン。悲惨さとは対極の終焉を迎えることにより、より一層戦争の過酷さや冷徹さが浮き彫りとなるのかも知れません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 在庫なし
感想投稿日 : 2019年10月10日
読了日 : 2019年10月10日
本棚登録日 : 2019年9月25日

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