おぱらばん (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2009年3月2日発売)
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本棚登録 : 634
感想 : 46
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大好きな作家の、短編集。素敵な一冊。

この人の「声」は、音にならない想いの足跡みたいなものに感じられます。
そして、孤独です。決して負の意味ではなくて、世界は独りの頭の中にある、という意味での孤独。
独りの時間の流れとは、さまざまな人と交わす言葉や、街角で出会うワンシーンが、自分の中の記憶を起こしまた流れていく、その流れ。
川の流れのように、ひとつ、またひとつと想いがめぐるんです。
この人の本で一番最初によんだのが「河岸某日抄」だから、川のイメージが強いのかもしれないけど。

どの短編も雰囲気あるけども、「のぼりとのスナフキン」、「河馬の絵葉書」、「貯水池のステンドグラス」が特に好き。
どの話も、時代に忘れられた文学作品に想いが行き着くので、読んでみたいなと思う本が増えます。
こんなに想いに奥行がある方と、お話してみたいなぁ。

「帰る場所がある限り、漂泊は甘えにすぎない」。
独りで、静かに、特に夜、読むと美味しいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本小説
感想投稿日 : 2009年4月7日
読了日 : 2011年10月24日
本棚登録日 : 2011年10月24日

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