NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2012年 01月号 [雑誌]

制作 : ナショナル・ジオグラフィック 
  • 日経ナショナルジオグラフィック社 (2011年12月28日発売)
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2012年1月号の目次
双子が明かす生命の不思議

個々の人間を形成するのは、先天的な遺伝か、後天的な環境か。双子の研究でその謎を解き明かす。

文=ピーター・ミラー  写真=ジョディ・コッブ、マーティン・ショーラー

 「カエルの子はカエル」と言うが、果たして個人を形成するものは、先天的な「遺伝」なのだろうか。それとも、後天的な「環境」なのだろうか。その疑問を解く鍵として注目されているのが、双子の研究だ。

 ほぼ同じ遺伝子を持って生まれた一卵性の双子が、同じ環境で育っても体質がまったく違ったり、違う環境で育っても性格がそっくりだったりすることがある。そうしたさまざまな“不思議”を取り上げながら、最新の遺伝学で明らかになってきた「第三の要因」について考える。
編集者から

 今月号の表紙は、この双子特集のトップページも飾ってくれたかわいい双子のギル姉妹。右のジョアンナちゃんの左手に「Twins Days Festival」の文字が入ったリストバンドを発見しました。本編にも出てきますが、これは、毎年8月に米国のオハイオ州で開かれる双子の祭典。2011年は、なんと1700組を超える双子が集まったのだとか。「そっくりさんコンテスト」や「ゴルフトーナメント」など、たくさんのイベントがあるようです。ここで双子同士のカップルが生まれたりするんでしょうかね? ちなみに老若男女問わずとのことですので、双子の皆さん、ぜひ今年の夏は参加してご感想をお送りください!(編集H.O)

参考資料:『エピジェネティクス入門 三毛猫の模様はどう決まるのか』佐々木 裕之 著 岩波書店

塩と大地が織りなす奇観

エチオピア、ジブチに広がるアファール低地。三つの構造プレートが生む、この地ならではの奇観に迫る。

文=バージニア・モレル  写真=ジョージ・スタインメッツ

 アフリカ東部のエチオピアとジブチにまたがるアファール低地。アラビアプレート、アフリカプレート、ソマリアプレートと三つの構造プレートが集まり、通常は海底にある構造プレートの継ぎ目(海嶺)が地表に現れている希有な場所だ。
 地殻変動が続くこの地には、噴火を繰り返す活火山、煮えたぎる溶岩湖、鮮やかな色彩を放つ湖があり、海面下150メートルの湖にはかつて流れ込んだ海水が厚い塩の層を残す。灼熱の苛烈な地でありながら、独特の多様な地形、数々の不思議な奇観は、訪れる者をとらえて離さない。3000万年前から続く地殻変動は、今もアファールを揺らしている。
編集者から

 テレビでも取り上げられることの多いアファール低地。地球で一番暑い場所としても有名ですが、その奇観ゆえに映画のロケにも使われるとか。この景観を生み出したのは構造プレート同士の「綱引き」。大陸を引き裂き、紅海を造ったそのパワーは、やがてこの地の地形に大きな変化をもたらすと考えられています。どう変わるのかは……、本誌をぜひお読みください。(編集T.T)

パナマに眠る謎の黄金郷

まばゆい黄金を身にまとい、1000年以上前に葬られた戦士の墓が、未知の古代文化を今に伝える。

文=A・R・ウィリアムズ  写真=デビッド・コベントリー

 運河でおなじみの国、中米のパナマ。灼熱の太陽が照りつける草地に大きな石柱が並ぶ1000年以上前の遺跡から、驚くべきものが出土した。まばゆい金の装飾品を身にまとった戦士の墓が、次々に見つかったのだ。
 今回の大発見をものにしたのは、スミソニアン熱帯研究所の考古学者。過去の文献を丹念に読み込んだ彼女は、国内にある他の遺跡との比較から、発見地となったエル・カーニョ遺跡にはきっと何かがあるはずだ、と考えた。この推理が見事に的中。イカの文様が描かれた黄金の胸当て、緑色に輝くエメラルド、タツノオトシゴやタカ、双頭のコウモリなど動物をかたどった金のペンダントなど、数々の貴重な遺物を発見したのだ。これは南北の米大陸でも有数の大発見。この黄金の遺跡は今後、未知の古代文化の謎を解く鍵となるかもしれない。
編集者から

 大人になってから行った中米メキシコでは、マヤ文明の神秘的なピラミッドと本場のタコスに感動。幼い頃にはたまたまコロンビアに住んでいたので、隣国ペルーのマチュピチュ遺跡にも行ったようだ(記憶はあいまいだが、また行きたい憧れの場所)。だがパナマとなると、印象が薄い。こちらもコロンビアの隣の国なので一度は行ったはずだが、何があったか記憶にない。中米にゆかりがなければパナマのイメージはもっと薄いはずだが、ぜひ、この特集内の写真をひと目見てほしい。この地域にかつてとってもハイセンスな黄金文化が栄えていたことが、わかっていただけるはず。 (編集M.N)

再生するカンボジア

「地雷が一つ減れば、脚を失う子供が一人減る」。戦乱の“負の遺産”を抱える国は、着実に復興の道を歩む。

文=マーク・ジェンキンス  写真=リン・ジョンソン

 1970年から98年まで続いた戦乱期に、あらゆる勢力が地雷を使ったカンボジア。地雷は戦乱が収まった後も田畑や牧草地に残り、農業を再開しようとした人が踏んで命を落とす悲劇は後を絶たない。
 しかし、今やカンボジアは、地雷による苦難を克服して復興をめざす国のモデルとなった。地雷の処理が進み、爆発による死傷者は1996年の4320人から2010年には286人まで減少。経済も力強く成長し始め、カンボジアのGNI(国民総所得)はこの10年余りで2倍以上増えた。
 地雷の根絶をめざして尽力する作業員たち、障害を抱えながらも力強く生きる人々……。過去を乗り越えようとしているこの国の今を追った。
編集者から

 右手と右目を失った歌手、義足の長距離ランナー、前脚を失ったゾウなど、さまざまな障害を抱えた人や動物が登場します。地雷に吹き飛ばされたときの悲惨な出来事を語る人もいます。でも、本文の内容はとても前向き。翻訳者の方から原稿を受け取って最後まで読み終えたとき、何だか勇気が湧いてきました。(編集T.F)

北極圏の犬ぞり警備隊

低賃金で休みなし。それでも若い隊員と犬たちは、闇と氷に閉ざされたグリーンランドを駆け抜ける。

文=マイケル・フィンケル  写真=フリッツ・ホフマン

 低賃金で休みなし。けがや空腹、凍傷は当たり前。ホッキョクグマに後をつけ回されることもざらで、家族や友人に会う機会もなければ、デートのチャンスもない――。
 そんな厳しい境遇にさらされるのは、世界の軍隊でデンマーク軍にしかない犬ぞり警備隊「シリウス」だ。シリウスは60年以上にわたって、長さ1万4000キロに及ぶグリーンランド北東沿岸の警備に当たってきた。
 二人の若い隊員に密着し、犬ぞり警備隊の過酷な日常をリポートする。
編集者から

 そりを引く犬たちがどんな犬種なのか、気になって調べてみました。東グリーンランド観光局のウェブサイトによると、もともとは「グリーンランド・ドッグ」という犬種だったそうですが、さらに体が重く強くなるよう独自に品種改良されているそうです。シリウスの過酷な任務に耐える精鋭たち。本誌114ページの9匹(※ウェブには未掲載です)を見ると、どの犬もたくましそうです。(編集T.F)

モンタナの大地 農民の心

夢を賭けた入植者たちの不屈の精神は、時代を超えて米西部モンタナの地に息づいている。

文=デビッド・クアメン  写真=ウィリアム・アルバート・アラード

 「未開の草原を開拓し、作物を育てて5年間定住すれば、その土地が自分のものになる!」――1862年にできた法律が、人々の夢をかきたてた。そして、わずかな希望を頼りに一世一代の賭けに出た開拓者たちは、米国西部の未開地へとやってきた。『大草原の小さな家』の一家と同じ時代のできごとだ。
 なかでもモンタナ州北部の「ハイライン」と呼ばれる一帯は平坦な未開地が広がり、半乾燥気候のため周期的に干ばつが襲う、荒涼とした土地だった。農業向きとは言い難いこの地で、干ばつのほかにも、作物の病気、トラクターの故障、収穫期に襲う雹(ひょう)やイナゴなど、数え上げればきりがない“敵”と闘いながら過酷な運命に耐え、ただひたすらに土地を守り、農業を営んできた人々がいた。その不屈の精神と土地は今も、新たな世代へと受け継がれている。西部を愛する写真家と筆者が、時代を超えてモンタナの地に息づく心を伝える。
編集者から

 「農業はまるで戦争みたいなものだ」。76歳の老人が語るこの言葉が強く印象に残った。“入植キャンペーン”の宣伝文句に半ばだまされてやってきたとはいえ、土地や気候の条件が厳しいモンタナで、皆、よく今まで生活を営んできたものだと、素直に感心する。しかも入植者のなかには独身や未亡人の女性もいたという。日本では最近女性が強くなってきたという風潮があるが、果たしてモンタナのような荒地に独りで乗り込んで人生を切り開くなんてことができるだろうか。時代も文化も違うとはいえ、実にたくましい。一体どうやったら、何年も干ばつが続くような土地で、農業をやって暮らしていけるのだろうと不思議に思うが、その秘訣はたしかに「根性」しかないかもしれない。(編集M.N)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: NATIONAL GEOGRAPHIC 2012
感想投稿日 : 2014年11月25日
読了日 : 2012年1月25日
本棚登録日 : 2014年11月24日

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