博覧強記の著者が、文学や美術に留まらずメルヘンやユートピア思想に材を取って、シュルレアリスムの解説を試みた書。シュルレアリスムに対する基本的なイメージはつかむことが出来た。
「理性を介さない裸のままの自我/世界」(=超現実) i.e. 存在の全体性 を志向し、それを現前させようとする芸術運動。自らの理性を解除して生(なま)のままの世界に向かおうとする「自動記述」や、世界を覆う理性的秩序の被膜に驚異と共に裂け目を入れようとする「デペイズマン」(一種の異化作用)など、多様な実験的手法を試みた。非/前理性的な夢・無意識・狂気・幼児性・未開原始文化・オカルティズム etc. への関心を有する。
個々の話に対する独立的な興味はそそられるものの、思想的なレヴェルでは、僕はシュルレアリスムに対して魅力を感じない。しばしばダダは美術史に於いてシュルレアリスムの露払いに貶められている感があるが、思想的な徹底性という点では、寧ろシュルレアリスムこそダダの中途半端な後退形態といえないか。勿論、シュルレアリスム運動の芸術領域に収まらぬ広範な影響力、及びそこから生まれた多くの魅力的な作品に対する評価は別にして。
シュルレアリスム画家として分類されるマグリットだが、その作品に顕われる彼の「自己意識」に対するアイロニカルな構えは、多分にダダ的ではないか?
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
人文科学
- 感想投稿日 : 2011年3月26日
- 読了日 : 2008年12月9日
- 本棚登録日 : 2011年3月26日
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