薄桜鬼 ポータブル(通常版) - PSP

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感想 : 75
3

【あらすじ】
幕末の時代に生きる主人公・雪村千鶴(姓は変更不可)は消えた父を探す為、京都へ訪れ、そこで「人斬り集団・新選組」の「秘密」を目撃してしまう。
秘密を知ってしまったことにより、軟禁されてしまう千鶴ですが、千鶴本人もその「秘密」に大きく関わっていくことになります。


【主人公】
薬師の父の娘で、"普通の女の子"。
典型的守られ主人公。
クセはなく、控えめな性格。自己主張もほとんどしない。

良く言えば「大和撫子気質」で悪くいえば「流されやすいお荷物主人公」。

余談ですが、
よく千鶴が好きか嫌いかの議論を目にし、その”嫌いな理由"として挙げられている2トップが、「闘えないから(足手まといだから)」と「みんな千鶴に嫉妬しているから」というもの。
でも、本質的には問題はソコじゃないと思うんだなぁ。(※勿論、そういう方もいることは否定しません)

個人的には彼女が【何考えてんのかわからない】のが最大のダメポイント。

これだけの出来事に巻き込まれたのなら、彼女は彼女なりの「思うところ」があるはずで、“感情的な”行動があってしかるべき。
それなのに、千鶴は何も感じず、自ら行動することをせず、ただただ周りに流される…。

大きな問題にぶつかって、悩んで悔やんで泣き叫んで、その後になんとか立ちあがって自分の問題を見つめ直す…。
そんな主人公にこそ「共感」や「頑張れ」という気持ち、感動が生まれますが、
この、何を考えて何を感じたのか不透明な子にそのような感情は抱けません。
主人公を「ひとりのキャラ」として捉えているからこそ、自我が薄すぎる主人公をどうにも好きになれないのです。


【攻略対象】
タイプの異なるいまどきの「イケメン」が登場し、
そのいずれもが潔く戦いに身を投じ、カッコよく描写されます。
カッコよくて”強い”男性に守られる・・・という展開なのでときめくこと必至。

反面、そのキャラの「内情」についてはほぼ描かれないですし、目立った欠点の描写もない。
表面的にはカッコいいけれど、突き詰めるとどこか言動に一貫性がない。
そのため、「かっこいいけど、なんか人間味がない・薄っぺらい」と言いかえることも…。


【システム/形式】
ノベル形式。
共通ルート⇒4章から分岐。


【ストーリー】
<<主軸>>
良くも悪くも「無難」という表現がしっくりきます。
綺麗にまとまった、分かりやすく、王道な「お涙頂戴」展開なので、すんなりお話に入り込めます。
「矛盾」や「意味不明さ」が無い、という点ではとても優秀です。

反面「凝った世界観」や「複雑で濃密(先が予想できないような)なシナリオ」という点では弱いので、意外性やストーリーの巧さを重視すると物足りない。

また、幕末らしい”思想のぶつかり合い”などの描写が一切ないので、難しくなりすぎず万人が手に取りやすい一方、「幕末ならでは」という要素は無く、「まぁ、ライト層向けだよねw」というオチが付く。

<<恋愛要素>>
糖度・恋愛描写ともに全体的に低め・薄め。

「イケメンと恋をすること」よりも、「イケメンのカッコよくて、男らしく、桜のように美しく、強く儚い生きざま」を魅せることが趣旨なので、「恋する過程」や「絡み」といった要素はそもそも薄い。

戦乱ものなので「絡み」が薄いのは想像の範囲内ですが、
気になるのは「キス」や「押し倒して暗転」…という描写はあるのに、”キスをするまでに育んだ思い”、という【過程】がすっぽ抜けている点。
シリアスで、「そういう雰囲気ではない」のに、ろくな説明もなく、キャラたちの心境の変化の描写もなく、いきなりラブ展開に持って行かれるとその「事実」が浮いているような気がしてしまう。
(乙女ゲームだから、”糖度補完”なんでしょうけども、ね)

また、主題の面でも勿体ないところが。
イケメン隊士らは命がけで主人公を守ってくれます。それ自体はとても萌える出来ごとだと思うのですが、
果たしてこの登場人物らにとって、主人公にそこまでの価値があるのか、そしてその価値を一体いつ見出したのか、という点を疑問に思ってしまうと途端に残念感が増します。

「私を命がけで守ってくれる」…といわれれば聞こえはいいけれど、「軽く命を投げ出している」ようにも感じられて、なんだかなぁ。
そう考えると、私は手放しに「新撰組カッコいい!」とは思いきれません。


【感想】
「ややミーハーな土方好きの人が新選組を乙女ゲームにしたらこうなった」な作品だと思う。
作品を通して、作り手の土方さんへの愛はものすごく伝わってきます、が、歴史の知識が足りないのか、単に活かすだけの能力或いは根気が無かったのか微妙にネタの使いどころが下手っぴで「大絶賛」はし難い。

また、恋愛面でも”説明不足”な点が多く、キャラの魅力や美麗な絵、声優さんの人気に頼りがち。
キャラがそれぞれ「動機」なくして行動しているので、上っ面はカッコイイですが突っ込んで考えると物凄くホワホワしていて微妙。
突飛なラブシーンを入れるくらいならハードボイルドな作品に仕上げた方がよっぽど収まりがよかったんじゃ…と思ってしまうほどです(”乙女ゲーム”としてそれが許されないのは充分に理解しております)

ただし、その欠点をある意味カバーし得るほど、キャラは「カッコいい」。
イケメンが好きで、イケメンに萌えたい!という人にはこの上ない「良作」と感じられるのではないでしょうか。


辛口で感想を書きましたが、土方さん大変萌えました。
近藤局長の死を責めて嘆く土方さんの後姿には、三木さんの演技も相まってすごく胸を締め付けられる思いをしたり。
ネタもキャラも色々良いだけに、「もっとこうだったらなぁ…!」が尽きない作品だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 乙女ゲーム
感想投稿日 : 2011年12月12日
読了日 : 2011年10月31日
本棚登録日 : 2011年10月31日

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