歴史の教科書にも必ず載っている「桜田門外の変」という事件は、年号や事実だけが知られているが意外に、その背景までは理解されていないように思う。その背景とは、水戸藩による尊皇攘夷思想、そして当時の藩主であった水戸斉昭による幕政改革に対する反感という伏線があり、さらに将軍家定の世継問題の動きに対して、彦根藩主井伊直弼を筆頭とする紀州派と斉昭を中心とした一橋派の対立という構図である。
しかし、著者はそうした政治的背景のみならず、彦根藩と水戸藩の間で起きた水上港運における積年のいさかいなどの描写も含め、特に水戸藩側からみた視点での怨恨が、読者にとってのそれであるような錯覚を覚えさせるかの如く描いている。そして安政の大獄が実施され水戸藩関係者がことごとく弾圧、処刑されるに至ると、読者はもう我慢ならぬと思わざるを得ない感情を、客観的ながらも共有するのである。
上巻は、そしていよいよ井伊直弼襲撃の実行を決意するところで終わる。
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- 感想投稿日 : 2018年10月8日
- 読了日 : 2013年4月4日
- 本棚登録日 : 2018年10月8日
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