やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1997年2月15日発売)
3.70
  • (7)
  • (20)
  • (19)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 248
感想 : 15
4

何がキッカケだったか、苦手と思い込んでしまった村上春樹。
ファンが多いからなんとなくヤ!というような天邪鬼な感情もあったかもしれないけれど。

そんな思い込みを払拭してくれたエッセイ。自然に見えるくせに鋭くて気付かされるコト満載の、軽やかな文体に、ゲンキンなものであっさり、すっかりファンになってしまった。

彼の凄さはとても多くの人がとても多くの言葉で論じていると思うので、今更、ここでとやかく言うのも憚られるけれども…

ああ、そうだよなぁ(行ったことないけど)、多分こうなんだろうなぁ、と思わされるアメリカの描写に何度も感嘆。
あーだよ、こーだよ、と客観的風に論じた文章は多いけれど、彼の目の付け所や語り口は意外と素直に「僕」目線。「僕にとってはこうなんだ、でも押し付ける気はないからよろしくね」とでも言いそうな雰囲気。「ドント・テイク・イット・パーソナル」なんてわざわざ書いてあるのに思わず笑ってしまう。

無理のない自然体に見えるその「僕」目線につい共感したり、納得させられたりするところがきっと、隠れたワザとか凄さとか、で、それが人気のヒミツ、だったりするのかもしれない。


思わず「そうそう!」と頷いてしまった箇所は多々あるけれど、私が一番、共感したのは
『10人のうち8,9人が「まあ悪くない」と思うより、大部分の人が気に入らなくても10人のうち1人か2人が本当に気に入ってくれる方が却って良い結果をもたらすこともある』
という意味のことが書いてある箇所。

つい、八方美人を目指してしまう。
つい、臆病風に吹かれて多勢に阿りそうになる。
しかも、その方が実際、無難なことも多かったりして…

「そんなのは、ケシカラン!」調ではない筆致がイイな、と思う。
却って良い結果をもたらすこと「も」ある。
あくまでも「僕」の場合。

もたらさないことだってあるよねぇ、、、
貫いてしまった結果、誰にも評価されないかもしれないし。

でもゼロはないんだな、と、ふとそんなことに気付かされたりする。
少なくとも自分自身は気に入ってあげられる。
できそうでできてない、イチバン大事なこと。


やりたいことしかやらない、思ったことしか言わない、というのは存外、難しいもの。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ・小説・フィクション
感想投稿日 : 2021年10月12日
読了日 : 2021年10月11日
本棚登録日 : 2021年6月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする