自分でも何を待っているか分からないのに、毎日毎日、駅前のベンチに座って何かを待っている二十歳の女の子。
彼女が一体、何を待っているのか。彼女自身にもわからない。ただただ「待っている」という行動の事実と、彼女が内に持つ、肥大した期待や恐怖や閉塞感や焦燥感だけが、描かれている。
一見、世界大戦という厳しい時代に精神を病んだ人のお話のようで、誰の心にもこういう瞬間は訪れるような気がする。私にもあった気がする。
彼女はいつになったら待っているものに会えるのか。会えるのかもしれないし、会えないのかもしれないし、はたまた、会っても気がつかないのかもしれない。
自分が何を待っているかさへもわからないから。
何一つ知らないのに、彼女の抱える息苦しさのようなものに触れると、いつか会えるといいね、と思ってしまう不思議な小品。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年8月12日
- 読了日 : 2016年8月11日
- 本棚登録日 : 2016年8月11日
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