2015年にメディアを騒がせた「文系学部廃止」の報道を受けて、その報道の誤りの背後にある、「文系は役に立たない」という常識そのものに対する問いなおしをおこなうとともに、これからの大学のありかたについての提言をおこなっている本です。
著者は大学史を簡単にたどり、「リベラル・アーツ」や「教養」、さらに現代の大学においてしばしば言及される「コンピテンス」などの概念が、どのような経緯によって生まれてきたのかということを明らかにするとともに、人類的な普遍性に奉仕し、普遍的な価値を追求することが大学のほんらいの使命であることが確認されています。そのうえで、目的合理性とは異なる、人類的な普遍性をもつ価値そのものを問う文系の学問は、むしろ「役に立つ」のだという主張が展開されています。
後半には、現在の大学改革の方向性を批判し、著者自身の考えるあるべき大学のかたちについての具体的な提言が示されています。こうした提言がどれほど実現可能性をもつものであるのかということはわかりませんが、日本の大学が進むべき道に悲観的な読者にとってもポジティヴな展望を示したいという著者の思いは伝わってくるように感じました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
学問・読書・知的生産
- 感想投稿日 : 2023年1月23日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2023年1月23日
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