聖徳太子 1 (集英社文庫)

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  • 集英社 (1993年4月15日発売)
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感想 : 8
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『隠された十字架』(新潮文庫)で、法隆寺は聖徳太子の鎮魂寺だとする説を発表し、論争を巻き起こした著者が、聖徳太子の生涯を、幅広い視野のもとで考察した本です。

著者は、津田左右吉に始まる実証主義的な歴史学の方法に、厳しい批判を投げかけます。津田らは、『日本書紀』をはじめとする聖徳太子に関する文献の中に矛盾を見いだし、それらは後世の作り話だと断じたと著者は言います。一方、和辻哲郎は、そうした神話が作られた精神へと遡源することをめざしました。これに対して著者は、聖徳太子に関するさまざまな伝承が作られた政治的状況から太子の生涯に迫るとともに、何よりも太子の「人間」に肉薄することをめざしていると言えるように思います。そのため、本書が描き出す聖徳太子像は、血の通ったものに感じられます。その一方で、本書の聖徳太子像には著者自身の思い入れが加わっていることにも、留意しておく必要があるように思います。

第1巻では、朝鮮半島の政治状況とそれに対する日本の対応について触れ、百済から日本に仏教が伝えられた理由を探っています。さらに、蘇我氏と物部氏の間の崇仏論争についても、詳しく論じられています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他の文庫
感想投稿日 : 2014年12月16日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年12月16日

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