この巻では、沖縄の歴史をひもとき、倭寇の正しい姿を解説し、さらに中国の冊封体制と種子島の鉄砲伝来との関係について説明するところからはじまっています。著者は、現代の日本人にとってこれらの史実がもつ意味を正しく認識することがむずかしいといい、シドニー五輪で柔道の篠原信一がいわゆる「世紀の大誤審」により金メダルを逃した事件に言及することで、現代の国際社会において日本人が心に留めておかなければならない教訓を読み取ろうとしています。
後半は、毛利元就、武田信玄、織田信長という三人の戦国武将がとりあげられます。「戦国大名はだれもが天下統一をめざしていた」という理解は、じつは信長によってその偉業が成し遂げられたことによってはじめて多くの人びとの常識として受け取られるようになったのであり、彼以前の戦国大名にはそのような考えがなかったと著者はいいます。こうした観点から信長と信玄を比較する議論は、たとえば批評家の秋山駿が著書『信長』(新潮文庫)のなかでおこなっており、著者の議論もそれを踏襲するものとなっていますが、著者自身の見解も付け加えてよりいっそう詳細に信長のおこなったことの画期的な意義が解き明かされています。
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カテゴリ:
歴史・地域・文化
- 感想投稿日 : 2019年10月18日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2019年10月18日
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