アメリカの大罪 (小学館文庫 R に- 10-1)

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  • 小学館 (2003年6月1日発売)
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評論家の西部邁が、反米保守の立場を鮮明に語っています。

著者がまず批判のやり玉にあげているのが、イラク戦争に際して我先にと言わんばかりに対米追従の立場を表明した堀茂や西尾幹二といった、親米保守の論者たちです。彼らは、集団的自衛権さえ認められない日本が、アメリカの方針に反対することなどできないと考え、日本の安全保障のためにアメリカに賛成するほかないと主張します。

しかし著者は、こうした議論は話が逆さまではないのかと言います。むしろ、日本に自立の姿勢が欠如しているからこそ、集団的自衛権を持つことから尻込みしてきたのではないか、というのです。著者によれば、自主防衛の姿勢を確立することが日本の急務であり、そこからアメリカとの協調外交のあるべき姿を探っていくというのが、あるべき順序なのです。戦後日本には、親ソ的な左翼と、対米追従的な保守しかなく、いずれも本当の自立からほど遠い立場だったというのが、戦後の日本に対する著者の診断です。

さらに著者は、保守主義の立場からアメリカニズムないしグローバリズムの「設計主義」を批判しています。とくに構造改革の大合唱だった本書刊行当時の言論界に対して、伝統に根ざした国民の英知を弊履のように捨ててしまうべきではないと声を上げています。

最後の章では、小林よしのりの『戦争論』(小学館)への左派の文化人からの批判に対して、小林を擁護する議論を展開しています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・経済・社会
感想投稿日 : 2014年3月4日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年3月4日

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