この巻では、新井白石の正徳の治から、吉宗の享保の改革、田沼意次時代を経て、松平定信の寛政の改革までがあつかわれています。
田沼意次にかんしては、大石慎三郎が名誉回復を図ったことが知られていますが、著者もその立場を引き継いでいるようです。とくに辻善之助の『田沼時代』(岩波文庫)については、田沼の業績を正当に評価していないとして、厳しく批判されています。そのうえで、儒教思想の商業蔑視の考えが江戸時代の経済政策を大きくゆがめていたとして、吉宗や松平定信に対しては辛い評価をくだしています。
江戸幕府の経済政策の問題点を指摘する著者の議論は、おもしろく読みました。その一方で、国際的な環境の変動も視野に入れた、経済史的な観点に立った議論が欠けており、もっぱら貨幣政策によって日本の経済のありようが決定づけられていたかのような印象をあたえる記述になっている点が、多少引っかかるような気分にさせられます。
読書状況:読み終わった
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歴史・地域・文化
- 感想投稿日 : 2021年2月20日
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- 本棚登録日 : 2021年2月20日
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