佐伯順子の『遊女の文化史』(中公新書)における近世の性の美化を批判し現代の売春の問題に口をつぐむ欺瞞を厳しく告発してきた著者が、日本の売春の歴史をおおむね実証的な観点からたどった労作です。
網野善彦や阿部泰郎らの研究の偏りを、学説史的な観点から解き明かしているところなど、勉強になることが多々ありました。後半は、『もてない男』(ちくま新書)などに近い、ややエッセイふうの叙述になっています。もっとも現代の性風俗について考察するには歴史学的なアプローチ以上に社会学的なアプローチが必要になるので、この不統一はやむを得ないのかもしれません。個人的にはいつもの小谷野節を楽しみながらよむことができました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・地域・文化
- 感想投稿日 : 2017年6月27日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年6月27日
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