植物学者の中尾佐助を中心に、文化人類学者の佐々木高明と、哲学や文明論の分野で仕事をおこなった上山春平を加えた三人の鼎談が収められています。
本書は、「照葉樹林文化論」の提唱者である中尾が、みずからの考えに修正を加えたことを機に企画され、主に中尾の新しい主張が説明されるとともに、佐々木がそれを批判するという議論の展開が見られます。上山はおおむね司会の役割を担当しており、彼自身の意見は積極的には提示されていません。
中尾は、かつて根栽植物栽培の段階から、雑穀栽培の段階への移行があったと考え、照葉樹林文化の農耕は根栽農耕からはじまったと主張していました。しかし、この考えに修正がおこなわれ、照葉樹林文化は焼畑による雑穀栽培からはじまり、その影響のもとで南の地域において根栽農耕がなされるようになり、その後北の地域では稲作が主流となっていったという考えが語られます。この中尾の修正に対して佐々木は、従来の中尾の意見に近い立場から、いくつかの疑問点を提出しています。
おおむね植物栽培と農耕にかんする議論に終始していますが、最終章では歌垣や妻問いといったテーマについて、日本をはじめ照葉樹林文化圏の諸地域における文化的な共通性についての議論もおこなわれています。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・地域・文化
- 感想投稿日 : 2022年8月27日
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- 本棚登録日 : 2022年8月27日
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