2部構成となっており、第1部は歴史学者の成田龍一が、加藤周一へのインタビューをおこなっています。第2部は、戦後思想家としての加藤の歩みを解説した成田の論考を収めています。
加藤の著者名で刊行される本の中で批判的なことを述べるのは難しいのかもしれませんが、成田の論鋒に甘さを感じるところがありました。第1部のインタビューでは、言語ナショナリズムの問題をめぐる箇所で、外国語を貪欲に取り入れ続けてきた日本の「雑種性」を強調する加藤に対して、成田は近代化における日本語の文体の問題を提出していますが、この両者の見方の違いが追求されることなく終わっているように思えます。
また第2部の最後で、成田は知識人論というテーマを持ち出していますが、1968年を国外で過ごした加藤が、果たして「高みの見物」の立場から脱け出しえたのかという問題の追求はなされていません。
そういうわけで、若干の不満は残りますが、思想家・加藤周一の仕事を概観するために、格好の入門書なのではないかと思います。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・地域・文化
- 感想投稿日 : 2015年2月10日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2015年2月10日
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